ぽんの日記

京都に住む大学院生です。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

健康診断違反率の推移

労働安全衛生法の違反率 - ぽんの日記の記事の続きです。

 

労働安全衛生法(安衛法)66条は定期健康診断の義務を規定しています。

例によって定期監督での違反状況の推移を見ると次のグラフのようになります*1

 

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*1:1976、77年については有機溶剤中毒予防規則等の各省令ごとの違反事業場数を合計したものであり、連続性がない点は注意

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裁量労働制で対象業務以外に従事した場合どうなるか

専門業務型裁量労働制は業務の遂行方法や時間配分の仕方について、労働者に大幅に裁量を委ねる業務を対象としています。

対象業務が省令や告示で定められているので、対象業務以外の業務に裁量労働制を導入することはできません。

 

専門業務型裁量労働制

 

定められた専門業務以外の仕事では裁量労働制にならないのは分かります。

ただ以前から疑問だったのは、1日の仕事のうちで一定部分は適法な裁量労働だけど、残りの部分は具体的な指示がある場合には、裁量労働の扱いはどうなるのだろうか、という点。

専門業務の部分だけ「みなし」が適用されるのでしょうか。それとも、その1日全体について「みなし」を適用できないのでしょうか。

 

労働法のテキストやコンメンタールをちらっと見てみましたが、この点が分かるように解説しているものは無かったように思います。ご存知の方がいればご教示して頂けると幸いです。

 

 

事業場外労働の「みなし」の場合には、ちゃんと説明があるんですよね。

すなわち、1日のうちに事業場内労働と事業場外労働の両方に従事する場合には、事業場外部分にだけ「みなし」が適用されます(両者の合計が所定労働時間を超える場合)。

だから外勤業務が「みなし」で7時間と定めてあって、内勤も2時間行った場合、一日の労働時間は9時間になります。このとき内勤の労働時間は「みなし」ではなく、しっかり実労働時間を把握する必要があります。

 

問 労働時間の一部を事業場内で労働する場合、労働時間の算定はどうなるのか。
答 みなし労働時間制による働時間の算定の対象となるのは、事業場外で業務に従事した部分であり、労使協定についても、この部分について協定する。事業場内で労働した時聞については別途把握しなければならない。そして、労働時間の一部を事業場内で労働した日の労働時間は、みなし労働時間制によって算定される事業場外で業務に従事した時間と、別途把握した事業場内における時間とを加えた時間となる。

労働基準法解釈例規」(昭和63・3・14基発第150号)。太字は引用者

 

 

裁量労働制でも同趣旨と考えて良いのでしょうかね?

それとも事業場外労働と違って、一日のうちで専門業務とそうでない業務に従事するという事態が想定されていないのですかね?

 

以前に当ブログで書いた記事で、東京労働局の調査を参照したことがありました。その中で「対象業務以外の業務を行ったときの取扱い」についても調査しています。

裁量労働制は「週」や「月」単位ではなく、「日」単位で「みなし時間」を決めます。対象業務以外に従事した場合には、その1日については裁量労働を解除するのが適切でしょう。

しかし1日のうちで対象業務とそうでない業務の両方に従事するということは、やはり想定されていないように感じます。

 

 

kynari.hatenablog.com

 

伊藤詩織『Black Box』

生々しい事件の記録として、これは強烈。

 

レイプ事件であるということはそうだけれども、逮捕状が出たのに直前で警視庁刑事部長の判断で逮捕が取りやめになったり、その後も検察・検察審査会で不起訴という判断になったり……

そういう「握りつぶされた」事件という認識でいた。

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実態に基づいた労働法の議論のために

昨日、「違反状況が不明になっている労基法の条文」という記事を書きました。

この記事を書いた理由を記しておきたいと思います。

  • 労働基準監督年報とは
  • 改善してほしい点(形式面)
  • 改善してほしい点(内容面)
  • 最低賃金審議会での参考資料
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違反状況が不明になっている労基法の条文

厚生労働省が毎年発行している「労働基準監督年報」という年次報告書では、全国の労働基準監督署の監督結果を集計されており、労基法等の違反事業場数を知ることができます。

 

しかし前回のエントリーの中で産業医の選任義務違反の件数について、年報には記載されていないということを書きました。*1

実は年報で集計されていない労基法等の違反は、産業医以外の項目でも存在します。今回はこの点をまとめました。

なお、ここでいう違反件数とは定期監督での違反事業場数を指します。

  • 未集計条文
  • 労働基準法
    • 16条(賠償予定の禁止)
    • 19条(解雇制限)
    • 22条(退職証明)
    • 22条第4項(ブラックリストの禁止)
    • 26条(休業手当)
    • 38条の2第3項(事業場外みなしの協定届出)、38条の3第2項(専門業務型裁量労働制の協定届出)
    • 90条第1項(就業規則作成の手続)、91条(制裁規定の制限)、106条(法令等の周知義務)
    • 92条第2項(就業規則の変更命令)、101条(労働基準監督官の権限)、104条の2(報告)
    • 109条(記録の保存)
  • 労働安全衛生法
    • 13条(産業医
    • 91条(労働基準監督官の権限)、94条(産業安全専門官及び労働衛生専門官の権限)、98条(使用停止命令等)、100条(報告等)、101条(法令の周知)、103条(書類の保存等)

 

*1:労基法15条(労働条件の明示)も1966~80年については違反事業場数が記載されていないことも別のエントリーで書いた。

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労働安全衛生法の違反率

「労働基準監督年報」の数字から、定期監督の違反率の推移を見るということをやっています。これまでは労働時間と労働条件明示義務に関して書きました。

労働時間の違反率の推移 - ぽんの日記

求人詐欺・求人トラブルの今昔――労働条件明示義務違反 - ぽんの日記

 

今回は労働安全衛生法(以下「安衛法」)を見ます。

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