厚生労働図書館は一般の人も利用できる(予め電話で連絡が必要)し、統計関係も揃っているので割と重宝させていただいていましたが、今年3月30日に複写サービスが終了してしまいました。
続きを読む高野剛『家内労働と在宅ワークの戦後日本経済』
雇用類似の働き方とか、ギグエコノミーとか、フリーランスの働き方が注目を集めている。
監督行政を調べた身としては家内労働法とかが連想されるのだけれど、これも本格的な研究は多くないように思われる。
そんななかで高野剛『家内労働と在宅ワークの戦後日本経済』ミネルヴァ書房が今年の2月に出ているので、読んでみた。
家内労働と在宅ワークの戦後日本経済 授産内職から在宅就業支援へ (MINERVA 現代経済学叢書) [ 高野 剛 ]
- ジャンル: 本・雑誌・コミック > ビジネス・経済・就職 > その他
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 5,500円
(メモ)niconicoお客様サポート
ニコニコのサポート窓口に問い合わせしたことのメモ。
続きを読む京大大学院の入試倍率
大学入試だと偏差値とか倍率とか話題になるのに、大学院ではそういった数字が出てこないと思いません? 偏差値はともかく入試の競争倍率はどれくらいなのだろうかとネットで調べようとしても、あまり出てきません。
大学によっては大学院の競争倍率についてもHPに情報を載せているところがあるようですが、全体としてはオープンになっていないようです。
- HPでの公表状況
- 情報開示請求
- データについて
- 募集人員
- 競争倍率
- 定員充足率
- 外国人留学生割合
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東京新聞 労災担当官削減の報道について
いくらかの憤懣とやるせなさを込めて書く。
東京新聞の報道についてだ。
この図が報道を要約している。
この配置換えに対しては、労災業務の人員、あるいは監督業務と労災業務の合計人員が減ることに批判が出ている。
しかし私が嘆息したのはそこではない。いや労災担当が大幅に減らされるのも驚いたけれど、個人的にはもっとショックだった部分がある。
私は修士論文のテーマに監督行政を選んだ。
長年研究してきた第一人者などでは全くなく、一介の大学院生に過ぎない立場ではある。けれど、監督行政というのはそれほど手を付けられていない研究対象であるため、他の研究者と比べてもそこそこよく知っているつもりだ。
監督官の人数についても当然調べた。
これについてはすでにブログのほうにも書いているので、そちらを参照してもらってもよいが、改めて書いておく。
なお過去の記事は
まず、今回の報道で一番驚いたのは監督部署の人数が1,929人だという点だ。
これまでの報道では、全国の監督官の人数は約3千人と報じられることが多かった。「労働基準監督年報」(以下、「年報」という)の数字もこれに近い。
一方で、2010年度まで遡って恐縮だが、この年の第15回省内事業仕分けにおいては、これより少ない数字が示されている。
監督業務人員、監督業務の職員数として、2,474人(労働基準監督署の人数)となっている。
両者の数字がどう異なるのかが明らかでないが、年報の数字が監督署長を含めた定員数であり、後者は実際に監督業務に従事した監督官の人数なのだろうと理解していた。
それは規制改革推進会議労働基準監督業務の民間活用タスクフォースで以下のようなやりとりがあったからだ。
○八代主査
…(略)…
3番目に、……本当にこの人たちが全部実働部隊なのかどうか。……
例えば労災関係の事務労働衛生安全管理をやっていたら一般の事務員の方が減らされて、結局、監督官もそちらの事務仕事をやらせているという話も聞きますので、そういうものを含めた本当に臨検に行ける監督官の数はどうかということです。
○土屋大臣官房審議官
……監督官が全部実働部隊なのかというお話がございました。特に労災保険の業務であるとか、安全衛生の指導の業務であるとかとの関係でというお話がございました。先ほど来、御説明しております3,241人という数字は、これは労災業務とか安全衛生の業務にはかかわらない、監督業務そのものにかかわっている監督官の数でございます。労災とか安全衛生については、そういう意味では3,241人とは別の定員の中で対応している状況でございます。
タスクフォースで示された監督官の数字は、年報のものと同じです。
約3千人という監督官の人数は、プレイングマネージャーは含むけれども、労災、安全衛生業務についている人数は含まないと明言しています。
そういうわけで、先の省内事業仕分けで出てきた2,500人弱という数字は、約3千人のうち、署長、副署長、専門監督官等、役職付きの監督官を除いた数字だと推察しました。
監督署は321署+4支署ですので、妥当なところかなと。
……で、最初の東京新聞の報道に戻りますけど、この報道によると監督部署の人数は2017年度で1,929人だったわけです。
2千人を下回っているわけで、前述の2種類の数字とも大きく乖離しているのです。
折角なので、もう少し付き合ってください。
突然ですが間違い探しです。次の2つの画像のうち異なる点はどこでしょう?
上が2015年版の年報、下が2016年版の年報です。
まず、この1年で開示される情報が減っていますね。
次に「平成〇〇年度の全国の労働基準監督官数は」までの文字が全く同じなのに、後に続く数字が3,969人と2,923人となっており、大幅減となっています。
でも私には「前年度に比し22人増」という文字が見えます。
大幅減のはずの2,923人だって、東京新聞の報道の1,929人より千人近く多いです。
報道のほうは監督署所属の監督官の数だと思われますが、本省および都道府県労働局所属の監督官の数も800人弱だと思うので、これを差し引いてもなお1,929人という数字は少ないです。
私は間違い探しのセンスがないので、どなたか的確に正解を示していただきたいです。
タスクフォースの資料では監督官の数は以下のようになっています。
このうち平成27(2015)年度以前の監督官の人数は、年報による数字と一致します。
この表には載っていませんが、タスクフォースの議論の中では翌年度(平成29年度)の監督官の定員が50人増の3,291人になると述べられています。
タスクフォースが開催されたのは昨年のことになります。
そして今年の3月末(だったと思います)に最新平成28年版の年報が公表され、そこには前述したように2,923人としか載っていないのです。
もちろん(?)、年報にはそれ以上の詳しい説明は記載されていません。
だらだらと書いてしまったので、まとめます。
①東京新聞が報じた監督官1,929人というのは、これまで公表されていた約3千人という数より圧倒的に少ない。
②年報で公表される情報が少なくなり、しかも全国の監督官の人数は大きく減っている(約4千人→約3千人)。その具体的説明もない。
③報道の1,929人、最新版の年報の2,923人のどちらの数字を採っても、監督官の人数が大きく減少しており、監督官の定義変更が行われていると考えられる。その際、最も考えられるのは、労災・安衛業務に従事する監督官の数をカウントしなくなったというものだが、だとすればタスクフォースでウソの答弁が行われていたことになる。
東京新聞が誤報したのか、厚労省が数字を誤魔化したのか、私の壮大なる勘違いなのか。
壮大なる勘違いであることを祈ります。
蛇足)
やるせなさを感じている理由はもう一つ。
修論書く際に、実は厚労省に部署・業務別の監督官・職員数が分からないかと情報公開したことがあったのです。論文の本論にはあまり関係なかったことと、そうした細かい数字は資料としてまとまっていないというような返答をされたので、結局情報開示請求を取り下げたのでした。
そしたら東京新聞の報道で部署別の人員数が報じられているという……