前野 ウルド 浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』光文社新書 を読みました。
いや、非常に面白かった。いまどきファーブルに憧れて昆虫学者になるような人が本当にいるんだな、というのも驚き。
もちろん、夢や憧れだけで研究者になれるわけではなく、困難を乗り越える多大な努力も必要です。この本の中でもお金や就職の問題は常につきまといます。
そもそもバッタの研究なんて需要があるのか。バッタ研究者として雇ってくれるところがあるのか。
最近だとヒアリが日本に上陸したことが騒ぎになりましたが、そうした被害があるときでない限り、昆虫学者はなかなか出番がありませんから。実際日本ではバッタの被害はほとんどなく、バッタ研究の必要性は乏しい状況。
そこでどうしたかというと、バッタ被害が深刻なアフリカ・モーリタニアへ行くという決心をしたわけです。
簡単な道のりではないのは容易に想像つきます。無収入のリスクを背負い、現地語やフランス語をほとんどしゃべれないのに飛び込んだわけですから。
なんども逆境にぶつかりながらも前に進んで行くのですが、単なる成功譚とはちょっと違う印象を受ける。語り口が非常に面白い。すごいことをしている人なのに、失敗やおっちょこちょいなところとかも書かれているので、親近感がわく。自らを鼓舞させようと発する言葉は真剣なのに笑えてしまったり。
まだまだこれから活躍されていく方でしょうから、自伝というのとはちょっと違うでしょうが、一人の人間の生き方として、面白いし参考になる本だと思います。