ぽんの日記

京都に住む大学院生です。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

監督官数の推移 補遺

以前のエントリーで書き残したことを書く。

 

kynari.hatenablog.com

 

定員外職員の定員化

労働基準行政職員の定員推移を見た際に、1950年代初頭に大きな定員削減が行われていることを見た。その後60年代の頭にかけて再び定員が増えるが、現場の人員自体がこのように変動していたわけではない。この部分の経緯を少しだけ書いておきたいように思う。

 

なお、各省庁全体の経緯に関しては『行政管理庁二十五年史』に「定員外職員の定員化」としてまとめられている(p.160-166)。人員整理が実行されたにもかかわらず、とくに行政の効率化を図る改革はなされなかったため、各省庁は定員外の職員として要員を確保せざるをえなかった。1957年度には定員外の常勤労務者が約6万人、常勤的非常勤職員が約3.3万人いたという。正規職員との待遇格差が問題視されたため、最終的に1961年に定員外職員がすべて定員化された。

 

その動向を労働基準監督署の職員について見たのが下のグラフである。予算別に定員数を示した。これは労働省都道府県労働基準局の人数を含んでいない。「定員外」については人数が把握できるもののみである。したがって54年以前の「定員外」職員の実態は不明である。

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出所)『労働基準監督年報』各年

 

1955年から定員外職員の人数が把握できるのは、前述した定員化の要求がこの年以降活発化するからであろう。

定員外職員は人数的には特別会計に吸収される形で定員化が図られている。この時期の定員数は、他の時期に比して大きな変動が見られた。だが定員外職員まで含めて考えれば、実態としてはそれほど人数の大きな変化が生じていたわけではないことが窺える。もちろん、定員が正規に確保されていないことやその待遇について問題がないわけではない。

 

定員と現員

『労働基準監督年報』にはこれ以上の情報は掲載されていない。そこで範囲は限定されるが、都道府県レベルの資料にも当たって、より詳しく見てみることにする。

 

図は東京労働基準局(当時)管内についての定員と現員の推移である。これは『東京労働基準局40年の歩み』から作成したものである。この資料の良い点は定員数だけでなく、現員数の情報まで得られる点である。類似の資料としては『東京労働基準局五十年の歩み』や『業務概要』もあったが、残念ながらそちらには定員・現員数について記載されていない。また他の県の資料もいくつか調べてみたが、現員数まで載っているものは他にはなかった。

なお、グラフの「一般」「特別」というのは、以前書いたように一般会計と特別会計のそれぞれの定員を表す。

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さてグラフを確認すると、定員と現員の相違が目に留まる。発足間もない1947年、48年は定員が未充足の状態であり、その後定員が削減されるも現員数は逆に増加している。その際、一般会計が減らされ、特別会計分が増員されている様子も見て取れる。

全体の職員数は50年代には定員超過の状態にあった。これが前述した定員外職員であろう。定員外職員の定員化要求が認められていき、60年代に入ってから定員と現員の乖離幅が少なくなった。

 

現在はどうなっているか

むしろ気になるのは現在の様子である。非常勤職員など、正規の定員以外の人員がどの程度存在するのだろうか。最近では労働基準監督業務を一部民間委託させる構想やOBの再雇用の動きが報じられた。外部委託も増えていることが予想される。

残念ながら『東京労働基準局40年の歩み』は1987年までしか把握できないし、非常勤や外部委託など、定員とは別枠で措置される部分は分からない。『労働基準監督年報』でも定員以外の情報は載っていない。

 

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出所)全労働省労働組合[1985]『 基準行政事務官問題検討委員会報告』

 

上の表は1984年のものとなるが、労働基準行政関係で予算計上されている各種相談員の数を示している。当時の基準行政職員は全体で8,606人だから、相談員の数は相当の多さだと言える。職員の定員増員には応じずに、こうした相談員を増やすことで対応してきたということだろう。

 

ただ2010年の省内事業仕分けでは「過重労働防止対策アドバイザー」47人(常勤換算19人)をすべて廃止している。その理由としては「アドバイザーは非常勤で相談などに応じているわけですけれども、むしろ、より重要であるので本来の監督官が、この過重労働対策について仕事をやっていくことに変えるために、アドバイザーを廃止する」と述べられている。昨年の民間委託とは逆の議論を行っているのが一興か。

この年は全国社会保険労務士会連合会中央労働災害防止協会、全国労働基準関係団体連合会等に6.2億円分の委託費を払っている。相談員や非常勤職を増やすより、民間委託にシフトしているのかもしれない。もっとも事業仕分けによってやはり削減されているが。