ぽんの日記

京都に住む大学院生です。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

過労死と「起因物なし」の死亡

 厚生労働省のHPに「職場のあんぜんサイト」というものがあります。

そのページ内に「死亡災害データベース」なるものがありました。その説明を読むと、

平成3年から平成26年までに発生した死亡災害の個別事例全数について、発生状況の概要を紹介します。

となっています。

 

おそらく「労働者死傷病報告」から作成したものだと思うのですが、死亡災害についてはすべての事例を網羅しているということですね。年次ごとにエクセルファイルになっており、各事例の概要を読むことができます。

 

職場のあんぜんサイト:死亡災害データベース

 

データベースには業種や事業場規模、起因物による分類などの情報が掲載されています。一件一件の内容は概要にとどまりますが、ざっと目を通していくだけでも、多様な事故類型があることがイメージできます。

 

労働災害は「転倒」や「墜落・転落」、「はさまれ・巻き込まれ」などの事故が多いですが、データベースには自殺や過労死も含まれているようです。

 

試みに過労死等の推移をこのデータベースで追ってみることを考えます。過労死等については労災補償状況については公表されていますが、労災認定されないものも多いので、比較してみれば違いがあるかもしれません。

 

今回は事故の起因物の分類が「起因物なし」「その他の起因物」「分類不能」となっているものを抽出してみました。

 

起因物とは、災害をもたらす元となった機械や装置等のことを言います。「過労死等」(脳・心臓疾患や自殺)の場合「起因物なし」と分類されることが多いようです。

しかしながら事件の概要を見ている限り「空調機点検中、くも膜下出血により死亡した」を「分類不能」としている例もあれば、「施工管理業務中、くも膜下出血により死亡した」を「起因物なし」としている例もあります。

それ以上詳しい情報については記載されていないので、単に分類上の揺れなのかそうでないのかは分かりません。

 

事例によっては「被災者が、自宅トイレで倒れているのが、発見され、病院へ搬送されたが、心筋梗塞により死亡した。尚、発症前6ヶ月間の平均の時間外労働は約95時間45分であった」や「自宅アパートにて、過重な業務が原因で、死亡している被災者が発見された」という風に過労死を覗わせる記載がなされているものもあります。しかしこうした記述がないからといって、過労死でないとは限りません。

 

そこで今回は大雑把ではありますが、起因物の分類が「起因物なし」「その他の起因物」「分類不能」をすべてカウントしました。

それが以下のグラフになります。「0~9」とか「10~29」となっているのは、事業場の規模です。過労死の規模別の情報ってあまり公開されていないと思うので、区分してみました。

 

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時系列変化としては2001年から04年くらいにかけて、件数が大きく伸びている気がします。2001年に労災の認定基準が改訂された影響などで、捕捉されやすくなったのかもしれません。

 

ただし件数としては2014年でも66件となっています。「過労死等の労災補償状況」によれば、2014年度の「脳・心臓疾患に係る支給決定件数(死亡)」は121件、「精神障害に係る支給決定件数(自殺(未遂を含む))」は99件です。合わせると220件となりますから、66件という数字は大分少ないですね。

http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/17/dl/17-2-1.pdf

死亡災害の全数を網羅しているとは言っても、漏れはやはりあるのかなと思います。