この前のエントリーで労働時間の違反率の推移について、ついでに。
労働時間や割増賃金の違反率が90年代末以降高くなったことを指摘しましたが、かならずしも長時間労働の実態が変わったからとも言い切れません。
簡単に『労働力調査』で週の労働時間別の労働者数を見てみます。
対象は非農林業の雇用者で、男女で傾向が異なるので別々にしています。
まず男性です。
2011年はデータがないので途切れています。「60~」とか「49~59」は週の労働時間で、右軸で「万人」で表示しています。1961年以前は集計区分が異なっており、「1~14」は「1~34」、「35~42」は「35~48」の数字です。
週の労働時間が49時間以上と60時間以上を「長時間比率」として折れ線で表示しています。数字は%(右軸)です。現在でも1割くらいの男性は週60時間以上働いているということです。
男性の場合の特徴は、景気動向と労働時間が関係していることです。不況期に残業を減らすことで生産調整等を行うためですね。オイルショック時やバブル崩壊時に長時間労働者の比率が減少しています。
一方でこちらは女性です。
男性と比べると景気変動の影響が小さいように見受けられます。
長時間労働者の比率は減少傾向ですが、パートなどの短時間労働者が増加しているという要因が大きそうです。
労働時間の長さと、労基法の32条・37条違反は必ずしもリンクしていません。36協定を結んで残業代を適切に払えば、合法的に長時間労働をさせることができますからね。
長時間労働者の割合がとくに増えたとはいえないのに、労働時間違反が多く摘発されるようになったということは、労基署の取り締まりが厳しくなったということになるでしょう。