ぽんの日記

京都に住む大学院生です。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

コンビニの労基法違反率が高すぎる

コンビニに対して労基署が行った監督結果のまとめです。

東京労働局(2017年度)

東京労働局管下の労基署がフランチャイズのコンビニに対して行なった監督結果です。

コンビニエンスストアに対する監督指導結果及び今後の取組について

違反率

監督実施事業場数は269事業場。そのうち違反があったのは257事業場です。

違反率はなんと95.5%にも上ります。

主な違反事項

最も多かったのが深夜業に従事する労働者への健康診断で59.9%になります。次いで労働時間の違反(32条・40条)で57.2%(内訳は36協定を適切に締結せず時間外労働させたものが40.9%、36協定の限度時間を超えて時間外労働させたものが16.4%)。

定期健康診断の未実施も53.9%に及びました。

 

長崎労働局(2014年度上半期)

長崎市内を中心に39店舗のコンビニに監督指導を実施(管内のコンビニの約2割)
「コンビニエンスストア」では健康診断未実施が約7割。改訂最賃額への対応が急務。

 違反率

労基法等の違反があったのは37店舗。違反率は94.9%です。

主な違反事項

就業規則の未届が最も多く、違反率は85%。

次いで労働時間(32条)の違反、健康診断(安衛法66条)の違反がともに69%となっています。

 

徳島労働基準監督署(2012年8~9月)

労働局ではなく労基署ということで合ってますかね? 徳島労働局のHPにはプレスリリースが上がっていないようなので、新聞報道から拾います。*1 

違反率

67店舗のうち60店舗に違反がありました。違反率は89.6%です。

主な違反事項

定期健康診断の未実施が最も多く、違反率は68.7%。

労働時間、就業規則の違反がともに40.3%となっています。18歳以下の年齢確認書類がないものも32.8%に上りました。

 

新潟労働局(2000年8月)

新潟労働局のHPは報道発表資料が2016年度以降しか記載されてないのですが……

都道府県労働局って県の組織じゃなく、厚生労働省出先機関のはずですが、なぜ県によって違っているのでしょう。

新潟労働局ホームページ : 労働基準関係公表資料

先と同じく新聞報道から拾います。*2

違反率

監督を行ったのではなく、調査票を送付して調べたようです。

県内509のコンビニに調査票を送付し、279店から回答。法令違反は78.9%とのことです。

主な違反事項

健康診断の未実施が66%です。

パート労働者を対象にした就業規則を作成していない店舗が47%、38%の店舗は有給休暇を適切に与えていませんでした。

報道を読むに、パート労働者に関わる点を中心に調べたのかもしれません。

 

違反率の高さ

違反率はそれぞれ東京(2017年)が95.5%、長野(2014年)が94.9%、徳島(2012年)が89.6%、新潟(2000年)が78.9%となっていました。

これは労基法関係の違反率ですので、パワハラ等の職場いじめ、時給が低い/時給を上げてもらえないといった賃金問題、シフトを強制される/やめにくいなどのブラックバイトのような問題は(直接労基法に違反するトラブルを除いて)カウントされていません。

 

しかし9割を超す違反率が見られるというのは少々驚きです。

昨日のエントリーで過労死等発生事業場の監督結果を紹介しましたが(東京労働局による過労死等発生事業場への監督)、最も違反率が高かった2009年度でも93.1%でした。ということは違反率の高さだけで言えば過労死を出した会社よりもコンビニ業界のほうが高い(少なくともそれに匹敵する)状態です。*3

 

なお、通常の定期監督での違反率は6~7割程度です。

業種別の違反率の推移を確認すると、接客娯楽業や保健衛生業では1960年代末に違反率が9割に達したことがありました。それ以降だとこれほどの違反率の高さは見られないと思います。

 

労働法違反率の推移 - ぽんの日記

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捕捉

定期健康診断(労働安全衛生法66条、安衛則44条)

定期健康診断は1年以内ごとに1回定期的に行わなければなりません。

深夜業に従事する労働者への健康診断(労働安全衛生法66条、安衛則45条)

深夜業(午後10時~午前5時)に従事する労働者には6か月以内ごとに1回定期健康診断を行わなければなりません。

就業規則労基法89条)

常時10人以上の労働者を使用する事業場においては就業規則を作成し、届出を行わなければなりません。

一部の労働者に対してのみ適用される別個の就業規則を作成することは差し支えないですが、すべての労働者が対象となるよう作成する必要があります。正社員については作成しているがパートタイム労働者には作成していないという場合は違反となります。

年少者の年齢証明(労違法57条)

18歳未満の労働者については、その年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければなりません。

 

 

kynari.hatenablog.com 

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*1:毎日新聞2012.10.1( 地方版/徳島25頁)「コンビニ:89.6%、労基法など違反 徳島労基署、8市町村調査」

*2: 朝日新聞2000年11月3日朝刊(新潟1面)「コンビニの8割、労基法など違反 パートに就業規則なく」、日本経済新聞2000.11.2(地方経済面/新潟22頁) 「新潟県内コンビニの78%、労基関係法令に違反。」

*3:ここでいう違反率は監督を実施した事業場のうち違反が認められた事業場の割合。たとえば100店舗に監督を行ってそのうち30店舗に違反があった場合、違反率は30%になる。条文ごとに見た違反件数ではないので、厳密には違反事業場率と呼んだほうが適切かもしれない。