生々しい事件の記録として、これは強烈。
レイプ事件であるということはそうだけれども、逮捕状が出たのに直前で警視庁刑事部長の判断で逮捕が取りやめになったり、その後も検察・検察審査会で不起訴という判断になったり……
そういう「握りつぶされた」事件という認識でいた。
その認識が改まったわけではないけれど、本書を読んでむしろ感じるのは「握りつぶされた」というような特殊な事件というわけではなくて、いかに被害者が声を上げづらいかという事実。
なんというか、レイプ被害を泣き寝入りさせるような、社会がそんな構造になっているんじゃないかと感じる。そう感じさせるほどに社会は抑圧的なんだと。
知人も警察も病院も相談窓口も、声を上げるという行動の前に壁となって現れる。記者であり、報道することが使命であるはずの著者にしてこれだけのハードルが待ち構えているのかと思うと、レイプ被害を訴えることがいかに難しい事なのか。
報道というのは、記者・ジャーナリストというのは、いかに事実に接近できるか、真相に入り込むことができるかという点で勝負をしている職業だと思っていた。けれど、この前見た映画「ペンタゴン・ペーパーズ」しかり、本書しかり、手にした目の前の事実を伝えることにも困難さがある。
もちろん本書でも、事実を解明するという点には力がそそがれている。
けれども、それだけでは報道にはならない。報道として発信していくために乗り越えるべきものは、それだけではないのだと思った。
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