ぽんの日記

京都に住む大学院生です。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

定期自主検査ほか

労働安全衛生法の違反率ということでいくつか記事を書いてきましたが、残りの主だったものはまとめてということで。

 

グラフは定期自主検査、安全衛生教育、就業制限、作業環境測定のそれぞれの定期監督での違反率の推移です。

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一番大きな変化は1972年の労働安全衛生法(安衛法)成立時ですね。労働基準法時代にも規定があったものもありますが、大幅に拡充したり、新設されたりがあったので、違反率の数字も跳ね上がってます。

 

正直安衛法は他の労働法規に比べて学者の関心が薄そうなところであるので、あんまり論じられたりしていないように思います。

 

以下、各規定の概要です。

 

定期自主検査(安衛法45条)

ボイラー等の特定機械等について行政機関または検査機関が一定期間ごとに検査を行うことを規定した条文です。定期自主検査の記録は3年間保存する必要があります。

定期的に自主検査を行わない場合、結果を記録しておかない場合、特定自主検査を一定の資格を有する検査業者等に実施させない場合には、50万円以下の罰金となります。

 

安全衛生教育(安衛法59・60条)

労働者の知識・経験不足も労働災害の一因となりうるため、それを防止するために安全衛生教育を実施する旨が定められています。

59条では、雇入れ時、作業内容を変更した時、一定の危険有害業務に就かせる時の教育を義務づけています。安全衛生教育は事業者の責任において実施すべきものであるため、所定労働時間内に行うべきとされ、法定時間外に実施した場合には割増賃金を支払わなければなりません(昭47.9.18基発第602号)。

60条は職長等「作業中の労働者を直接指導又は監督する者」に対して、作業方法の決定、労働者の配置等に関する教育を行う義務を定めています。

 

上図だと分かりにくいですが、安全衛生教育については労働基準法時代にも50条に規定がありました*1

 

就業制限(安衛法61条)

クレーンの運転等の危険な作業を伴う業務は就業制限業務とされ、有資格者以外がこれらの業務に就くことを禁止しています。

事業者が無資格者を業務に就かせた場合は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金。無資格者がその業務を行った場合は50万円以下の罰金です。

 

労働基準法時代は49条に規定されていました。

 

作業環境測定(安衛法65条)

事業者は有害業務を行う屋内作業場等の作業環境の測定を実施し、その結果を記録しなければなりません。また都道府県労働局長は労働衛生指導医の意見の基づき、事業者に作業環境測定の実施その他必要な事項を指示することができます。

作業環境の測定を実施しない場合、その結果を記録しない場合は6か月以下または50万円以下の罰金、都道府県労働局長の指示に従わない場合は50万円以下の罰金です。

 

監督年報には全体の違反事業場数とともに各規則別*2の違反内訳も掲載されています。ただし1976,77年は各規則ごとの違反件数しか分かりません。上記の違反率は1976,77年は各規則別の合計で算出しているので、連続性には注意してください。

 

本条の違反事業場数が監督年報に載るのは1975年以降になっています。この年は作業環境測定士や測定機関について規定した作業環境測定法が制定された年です。

 

作業環境測定は2012年ごろに違反率のグラフがホップしています。どうやら有機則と特化則が関係しているようです。

下は各規則別の違反事業場数の推移。

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*1:「使用者は、労働者を雇い入れた場合においては、その労働者に対して、当該業務に関し必要な安全及び衛生のための教育を施さなければならない」罰則付き

*2:労働安全衛生規則、有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則、石綿障害予防規則、電離放射線障害防止規則、酸素欠乏症等防止規則、事務所衛生基準規則、粉じん障害防止規則