ぽんの日記

京都に住む大学院生です。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

鎌田浩毅『地学ノススメ』

ブルーバックスから出ている、地学の入門書。

大学の入試科目に選択されないという憂き目を見ている地学だけれど、「ほんとはこんなに面白いのに」という著者の声が伝わってくるよう。

初学者でも割合読みやすいし、「おもしろくてタメになる」という謳い文句はその通りだと思う。

 

ブルーバックスの新書だが縦書きになっている。それがある種、物語として読みやすくなっている点でもある。

内容はおおむね地学研究の進歩に沿って書かれてる。このような科学史的な書き方は、どのような謎が関心を持たれてきたか、どのように解明されてきたかが掴みやすくて、理解を助ける。

初めは地球が丸いことをどのようにして知ったかといったことから始まり、ウェゲナーの説がプレート・テクトニクスにつながっていくだとか、プルーム・テクトニクスの考え方に至ったりだとか。

 

 

・・・高校の地学には、21世紀になってからの研究の最先端が教えられるという特徴があります。・・・

数学では17世紀までに発達した微積分などの内容が教えられ、化学では19世紀までに発見された内容までが教科書に載ります。また物理では20世紀初頭に展開された原子核物理学までが教えられ、生物では少し時代が下りますが20世紀後半に進歩した免疫や遺伝子操作までが入っています。

これに対して地学では、まさに今世紀になって新しい研究が展開中のプルーム・テクトニクスや、地球温暖化問題が教科書で扱われているのです。(6頁)

高校で勉強してた時はこんなこと全然考えなかったけど、言われてみるとなるほど。

高校での学習と大学での研究の距離感って、きっと分野ごとに違うよね。大学レベルの数学とか、足を踏み入れたくない。……いえ、本書ではそんな話をしているわけではありません。個人の感想です。

 

地球の歴史を扱う学問なだけに、タイムスケールが大きい。実験科学と違って、地震や火山の噴火などの出来事は一回性的な現象でもあって、そういうところは歴史学・考古学に近いのかもしれない。

 

地磁気の逆転」という現象は、京都帝大の松山基範(もとのり)教授(1884~1958)が最初に明らかにしたそうだ。でも1929年に発表した地球磁場の反転説は当時は受け入れてもらえず、1960年代の古地磁気学の発展を待たなければならなかった。

この手の「生前は評価されなかった」的な研究は、短期的に業績を求める潮流の中では生まれにくくなるのだろうな。