ぽんの日記

京都に住む大学院生です。研究とは関係ないことも気ままに書いていきます。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

戦後日本の児童労働

普段このブログでは戦後のことしか書いていませんし、日本のことしか書いていませんが、表題に「戦後日本」と付けたのは、単に「児童労働」だと途上国か戦前の話だとイメージされてしまうだろうと思ったからです。

 

児童労働の統計や研究はどの程度あるか

どの程度あるか、と提起しておいて申し訳ないですが、どの程度あるんでしょう? よく知りません。

 

通常、労働統計ですと労働力人口の把握は15歳以上で行われていると思います。生産年齢人口が15~64歳だとされていますからね。なので15歳未満で働いている人の数が分かりません。

 

国勢調査の場合はどうかというと、これもやはり労働力調査の15歳以上に合わせているようです。

過去にさかのぼると、「昭和25年国勢調査」(1950年)の「用語の解説」によれば

本調査においては満10才以上のすべての者について就業状態を調査した。しかし14才以上の者の就業状態につき毎月行つている労働力調査との比較対照上14才以上の者を中心として集計を行つたので、本報告書に掲げた結果も14才以上の者の就業状態に関するものである。

 と説明されています。

当時は14歳以上だったようですが、それ以後の国勢調査では15歳以上となっています。

 

もちろん昭和25年の国勢調査でも10歳以上について調査していますし、現在の国勢調査の調査票でも出生年月について尋ねていますから、15歳未満の就業者の数を把握することはできるかと思います。ただ通常集計され、公表される統計表には、そうした児童労働は含まれていないということです。

 

ちなみに1950年段階では14歳以上が労働力調査の対象だったとのことですが、労働力調査の変遷というページを見ても、調査対象年齢を変更したという記述がありません。別に重要ではないのでしょうか。*1

 

 

児童労働の研究もあまり見当たらないように思いますが、JILPTの前身、日本労働研究機構(JIL)が『「先進国」における児童労働』(資料シリーズNo.99、2000年)を出しています。追記:この文献はアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、タイを取り上げていますが、日本についての調査はありません。)

1999年6月にILO総会で児童労働に関する条約が採択され、関心が高まっていた時期でした。

日本の労働基準法でもこの時期に最低年齢(56条)が「満15歳」から「満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで」となりました。

 

 

児童の使用許可と違反

以前書いたことがあると思いますが、中学生であっても労基署長の許可(と学校長の証明書と法定代理人の同意書)があれば、違法でない形で就労させることが可能です。

 

そういうわけで、児童の使用許可の申請、許可件数については「労働基準監督年報」で集計されています。

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1953年以前の申請件数については不明です。ただ、こうしてグラフを作るとほとんど申請件数と許可件数が重なり合っているので、許可件数だけでいいかもしれません。

ピークは1963年の38,287件です。その後減少しますが、70年代~80年代半ばくらいまでは1.1~1.2万件の水準にありました。1986年に1万件を割ってからは、ほぼ右肩下がりです。

1985年前後という年は、経済的にも法律的にも画期とされやすい時期な気がしますが、児童の使用許可という意味でも転換点に当たるかもしれません。

 

 

年少関係の定期監督での違反件数は以下のようになります。

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年少者は18歳未満なので児童労働以外も含みます。

先ほどのグラフ以上に変化が激しく、70年代以降はほとんどなくなってしまいます。

56条の最低年齢違反は60年代の件数が多く、ピークはやはりというか1963年で、2,106件に達しました。

 

このような傾向になっていることの一因は、60年代に監督行政が年少労働者対策に力を入れたことが挙げられます。

とりわけ注目されたのは新聞販売店で、当時新聞配達業務に従事する15歳未満の児童は18万人に及んだとされます。1964年3月に「新聞配達に従事する年少者の労働条件改善指導要綱」が策定され、65年1~2月には大規模調査が行われました。こうした経緯があって、日本新聞協会が日曜夕刊の廃止を決定したそうです。*2

 

 

労基法の年少者の保護の話をすると、法58条第2項(年少則3条)において、未成年者の労働契約解除があります。未成年者側に不利な労働契約は、親権者や労基署長が解除することができます。

例によって例のごとく「労働基準監督年報」によれば、記録が残っている1964年以降で労働契約解除命令が発せられたのは、1967年の1件のみです*3。年少労働者への取り組みが最も熱心だったこの時期においてもほとんど利用されることはなかったようです。

*1:あれですか、数え年とかの関係ですか?

*2:以上、1964年版「第17回労働基準監督年報」39~40頁の記述による

*3:なのでグラフは作りませんでした