ぽんの日記

京都に住む大学院生です。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

技能実習生の失踪・労働災害

技能実習生の失踪者が急増したことが話題となっているようなので、少し確認ということで。

 

「失踪者数」

外国人技能実習生の「失踪」ということですが、確かにJITCOのページを見ると「失踪者数」という風に書かれているんですね。ただし、掲載先を確認すると「行方不明者」となっています。

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ネット上で確認できるのは2014~2016年分となっているので、それ以前についてはJITCO白書を参照して、過去の推移を表にしてみました。

 

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最新の数字として確認できたのは2016年度の数字だったので、2017年と2018年(上半期のみ)は報道から拾いました。報道のされ方を見るに、2018年(1~6月)と昨年は年ベース、JITCO白書は年度ベースですのでズレがあります。

 

またJITCO白書の注釈によれば、この行方不明者数とは技能実習生2号のみの数字です。

技能実習生(2号)の行方不明者は、監理団体・実習実施機関からのJITCOへの報告をベースに把握しているが、技能実習生(1号)の行方不明者は、監理団体・実習実施機関がJITCOに報告する仕組みになっていないので把握できない。

入国1年目の在留資格である1号の行方不明者数は把握できていないのですね。

 

日経新聞の次の報道だと、「法務省によると、17年の失踪者は7089人で前年比40%増だった。」とあります。

技能実習生の失踪7000人 駆け込み寺、元難民が奔走 :日本経済新聞

 

ただ、前掲したJITCOの数字だと2016年度は3222人ですので、40%増どころか倍増してます。なので数字がちょっと合わないのですが、出所については「法務省在留外国人統計などを基に作成」としか書かれていないので、どこから持ってきた数字なのか分かりません。在留外国人統計だと「失踪者数」については把握されていないはずです。

 

技能実習生の「失踪」が急増しているのはおそらく事実なのでしょうが、そもそも「失踪」の数がちゃんと把握しきれているのか、多少気になります。

 

 

死亡事故発生状況

同じくJITCO白書から作成しました。

この数字についても「監理団体・実習実施機関から報告があり、調査した事案を取りまとめたもの」なので、暗数があるだろうことは言うまでもありません。また、労働災害以外の事故も含めた数字となります。

 

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実習生が増えれば事故も増えるのはある程度予想できるにしても、「脳・心疾患」が多いの気になるところでしょうか。自殺と合わせれば、死亡全体の3分の1ほどを占めます。実習生は年齢的には若い方が多いはずですので、脳・心疾患の多さは目を引きます。

 

 

労働災害発生率

実習生の労働災害の業種別発生状況については、以下のようになっています(2017年のJITCO白書より作成。数字は2015年度のもの)。

「千人率」とは千人当たりの労働災害発生件数のことです。

 

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休業4日以上の労働災害について、日本全体の年千人率と比較してみたのが下のグラフとなります。全体の数字については、職場のあんぜんサイト:労働災害統計 (平成29年)を参照しました。散布図にプロットしてある点が上(左)に偏っているものほど、平均と比べて実習生の労働災害発生頻度が高いと解釈できます。

 

「実習」と名の付く制度ではありますが、実習だから比較的安全が確保されているとは決して言えない状況であると思います。

 

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