前から少し気になっていて、でも調べないでいたことなんですが、このまま忘年してしまう前に、ブログに書き留めておきます。
社会保険や年休って、なんで実労働時間ではなく所定労働時間を基準にしているんだろうという話です。
いや、実労働時間のような毎月あるいは毎日変動しうるような時間ではなくて、就業規則や雇用契約で定めた時間を基準にするというのは、なんとなく分かります。
ただ、所定労働時間と実労働時間が大きく乖離してしまうのが常態化している場合は、どうなるのだろうか、と。
たとえば〈パート労働者〉の1日の所定労働時間を1時間とか短く設定しておいて、しかし実際には法定内残業が常態化していて〈フルタイムパート〉みたいになっている場合。
法定内残業ではあるので、割増賃金の支払義務はなく、通常の時給を支払えばいいでしょう。一方で、所定労働時間として短いので、社会保険には別に加入させなくてよく、年次有給休暇は所定労働時間分の賃金を支払うと決めておけば、1時間分の賃金を払うだけで済む。所定労働日も合わせて少なくしておいて、法定外休日労働という形で働かせておけば、そもそも年休付与日数が少なくて済む。
もっとも、現実問題として、社会保険に加入させなかったり、年休が取らせなかったり、サービス残業をさせたりしている事業者はいるわけですから、〈節約〉したいだけならこんなことしなくてもよいのかもしれません。
労働時間に該当するか否かを巡る争いはよく聞きますが、所定労働時間の定め方がおかしいというので争いになったケースはあるのでしょうか。
以下、法律の「所定労働時間」に関する規定。
第十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、……厚生年金保険の被保険者としない。
(略)
五 事業所に使用される者であつて、その一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される……通常の労働者……の一週間の所定労働時間の四分の三未満である……短時間労働者……又はその一月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の一月間の所定労働日数の四分の三未満である短時間労働者に該当し、かつ、イからニまでのいずれかの要件に該当するもの
イ 一週間の所定労働時間が二十時間未満であること。
(以下略)
健康保険も同様*1。
501人以上の企業で、週20時間以上の所定労働時間の労働者にも、適用対象を拡大したのは、2012年の年金機能強化法による。
それまでは「内翰」によって、運用上、4分の3ルールとなっていた。
出所)https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/topics/2012/dl/0829_01_01.pdf
第六条 次に掲げる者については、この法律は、適用しない。
一 一週間の所定労働時間が二十時間未満である者……
(以下略)
第三十九条(年次有給休暇)
7 使用者は、……有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。(以下略)
安衛法66条の健康診断は違うのか?
② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事す る通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること
*1:第3条1項9号