田中先生のツイートを引用させていただきますが、電子化して公開する、ネットで読めるようにする、なんてことは大抵の人は同意してくれるんじゃないかと思います。
https://t.co/xBLenGF5im
— TANAKA Sigeto (@twremcat) February 1, 2019
あえていえば、とにかく報告書の類は全部電子化して公開しろ、というのがまずあるわけであるが。まあでもそれは別に「先端的」ではない。
それでも「あえて」言っておくべきことなのかもしれません。
本ブログでたびたび用いている『労働基準監督年報』に触れる形で、そのことを述べておきたいと思います。
『労働基準監督年報』(以下「監督年報」と略す)とは(厚生)労働省が年1回発行している報告書のことですね。監督年報の冒頭の文章から引用するなら、「労働基準行政の活動状況を収録したもの」です。
このような年次報告を公表することは、ILO条約にも規定があるので、「国際法上の義務だ」ととりあえず喧伝しておきましょう。
前にこんなエントリーを書きました。
さて、監督年報にアクセスしようと思ったら、まずはネットで検索すればいいですね。厚生労働省のページからpdfを見ることができます。
ところが、現在ネットで見れるのは平成23年以降のものとなります。平成22年(2010)年以前のものを閲覧するには、紙の資料にアクセスするしかありません。
そういうわけでCiNii Booksで大学図書館の蔵書を検索してみます。
統計書にありがちですが、「図書」と「雑誌」の両方で登録されていてややこしい。
で、眺めていくと、私の見落としでなければですが、途切れなく所蔵するところって1か所もないんですね。大原社研とか一橋の経済研究所とか惜しいけど、微妙に欠けてる年があります。
図書館のハシゴが必要ですね。
関西だけでコンプリートすることは不可能。
さすがに国会図書館はすべて揃ってます。古いものについては「図書館送信」でデジタル化されているようなので、公共図書館などに行けば電子化されているのを見ることはできます。
一番古い監督年報のみ、インターネット公開されています。
ダメなんですかね、全部ネット公開しては。
ちょっと話がそれますけど、デジタルアーカイブ事業みたいなのって、古い資料からデジタル化してく感じありません? 私みたいな、比較的最近の歴史を調べてる人間は、あんまり利用したことがない気が……(単に研究対象の問題ですかね。長年歴史研究をしている人だったら「便利になった」というのでしょうが)。
京都市統計書も第1回の明治42年だけ、ネットで見れます。1909年です。西暦表記にしてほしいですよね。
「現在は第1回統計書のみ公開しておりますが,今後増やしていく予定です。」というのは2年くらい前にも読んだ気がするのですが、きっと記憶違いでしょう。でも、古いほうからデジタル化してくんだろうな。
国立国会図書館サーチ(NDL Search)で「労働基準監督年報」を検索すると、各公共図書館の所蔵は、こんな感じです。
京都学・歴彩館が多いのは個人的には助かったんですけど、ほかの地域の人は悲しいよね。
「労働基準監督年報」なんて、単に基礎的な資料が載ってるくらいのものですよ。なのに調べるのは意外と面倒だったって話。そりゃ歴史家が古文書を発掘するよりは簡単な手間でしょうけど、国の業務統計を調べるくらい、もっと楽にできてもよさそうなものでしょ。
ネットに上げてある統計だったらダウンロードすればいいだけなのに、紙の統計書だと図書館に行って、複写申込書に書いて、全体の半分までしかコピーできない。
そういう意味で結構助かっていたのが厚労省の図書館。
ほぼ全部揃っている(いま見たら「第1回」だけない?)。
欠けている巻号を気にしなくてよかったし、複写申込書みたいなのもなくて自由にコピーできました*1。1枚20円だから国会図書館よりいい。
しかしその厚労省図書館も、複写サービスが終了してしまいました。コピーできませんと。
遠隔複写サービスが終了したのではありません。そんな便利なサービス、はなっからありません。コピーができなくなったんです。撮影も禁止です。
まあ、統計書が全部図書館に揃ってないなんて、監督年報に限らずいっぱいあるわけですけど。
あと監督年報は「附属資料」のところに統計表が載ってるだけだから、統計書扱いされてないかも。ページ数的には本文より「附属資料」のほうが多いのですが*2。
職安行政の業務統計である「労働市場年報」「一般職業紹介状況」はe-Statにあるけど監督年報*3は載っていません。
あれ、もしかして監督年報って業務統計じゃない?
監督年報がマイナーな資料である点は、反論しづらいところです。
このブログではさもメジャーな統計であるかのごとく(?)、いろいろなグラフを載せてきましたが、たぶんほかの論文や書籍を探しても載ってないグラフばかりだと思います*4。いまのところ。
せっかくなので、監督年報を使ってどんなエントリーを書いてきたかをまとめてみますか。
一番多いのは定期監督の違反率の推移。
求人詐欺・求人トラブルの今昔――労働条件明示義務違反 - ぽんの日記
36協定とか裁量労働制の届出件数なども監督年報に記載されています。
家内労働法も労基のお仕事です。
申告監督はごめん、書きかけ。
再監督はこういうのを書きました。
送検に関しては、電通の裁判のときに少しグラフを載せたのと、送検率を計算したのがありました。
労働基準監督官の数については、まだ書かなくてはいけないこともあるんですが。
監督年報の記載だけじゃ不十分なんですよね。
そういう意味では、「書けない」ということを書いたりも。
監督年報には労基法の適用事業場数・適用労働者数の表も記載されています。
ですが労基法の適用労働者数って、「常用労働者数」を使ってるのかよって思ったりもしました。
労基法の適用事業場・労働者数と労災保険の加入率 - ぽんの日記
こんなのも書きましたね。
ちょろっと使っただけですが、「女子、年少者に対する中間搾取事等司法事件」も昔の監督年報から拾った数字です。
そういえば非常災害時の時間外労働の記事とか、どう説明したらいいのか分からないまま載せたグラフもありましたが。コンドーム案件みたいなことだったら悩むだけ無駄なんですけど。