ぽんの日記

京都に住む大学院生です。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

放火殺人 労災保険 第三者求償

もう少しかかる。その話はしない。

労災保険の話でもしておく。

 

労災保険の給付は、第三者が加害行為を行って発生した場合でも貰える。自動車事故とか、強盗とか。

保険給付が行われた時には、政府が加害者に対して損害賠償を請求できる*1。具体的には労働局長のようだ。

 

第十二条の四 政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。

労働者災害補償保険法)

 

f:id:knarikazu:20190724115105p:plain

 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1023-5d.pdf

 

 

労災貰えれば健康保険と違って自己負担ないし。療養補償、休業補償、障害補償、遺族補償、葬祭料。。。

労災でなかった場合でも加害者に損害賠償はできるけど。民事裁判? 支払能力?

労災で給付を受ければそういうハードルがない。

 

 

労災の認定は業務遂行性と業務起因性が必要。

労働契約結んでて作業中だったら、遂行性あり。外部の第三者の加害行為の場合、問題は業務起因性。

加害行為が業務と明らかに関連していて、加害者の私的な怨恨がない、と言えればよい。

 

 【労災が認定された例】

・建設部長が作業の手抜きを指摘して大工に殴打され負傷した場合*2

・勤労係長が労働者の不心得を注意して殴打された場合*3

・寮の炊事夫が寮員に言いがかりを付けられ包丁で切り付けられた場合*4

・警防係員が酔漢の乱暴を制止しようとして負傷した場合*5

 【されなかった例】

・寮自治委員長が寮生から暴行を受けた場合*6

・無札乗車者を検札した車掌が後日ダンス場暴行を受けた場合*7

・電気代集金人が集金先でケンカになり殴られて負傷した場合*8

・事業附属施設内で就寝中の工場長が元従業員に殺害された場合*9

(以上、厚生労働省労働基準局労災補償部労災管理課労働者災害補償保険法』七訂新版、2008年)

 

最近だと、

競馬場のマークレディが同僚警備員に殺害されたことについて、業務起因性が認められた例(大阪高判平成24・12・25)

Dの加害行為がC[被災者]の業務とは関係がないCとDとの私的怨恨,またはCの職務上の限度を超えた挑発的行為もしくは侮辱的行為,あるいは,CとDとの喧嘩闘争によって生じたものと認めることはできず,むしろ,本件苦情の申出というCの業務と密接に関連する行為に関連して,その業務に内在するまたは随伴する危険が現実化して発生したものと認めるのが相当である。

 

海外出張中の会社員が第三者の加害行為により殺害された場合について業務上の災害に当たるとされた事例(徳島地判平成14・ 1・25)

太郎は、本件事件の際、約八万円入りの財布を強取されたこと、本件の約半年前に、北京市内のホテルにおいて、日本人旅行者が殺害された上に金品を強奪されるという、本件とほぼ同様の事件が発生していたほか、外国人が宿泊先のホテル内で強盗殺人の被害に遭う事件も発生していたこと、本件後、大連市内では、日本人が被害者となる事件が複数発生していること、本件当時、△△ホテルにおいて、宿泊者に対する安全対策が十分であったとはいいがたく、現に本件事件が発生していることが認められる。これらの諸事情を前提とすると、本件当時、△△ホテル等において、日本人が強盗殺人等の被害に遭う危険性はあったというべきであり、本件事件は、業務に内在する危険性が現実化したものと解される。したがって、太郎の死亡には業務起因性を否定すべき特段の事情はなく、労災保険法七条の「業務上死亡した場合」にあたる。

 

*1:2016年度だと新規求償者数は15,324人。うち自動車事故が12,481人。厚生労働省労働者災害補償保険事業年報」より

*2:昭和23.9.28基災発第167号

*3:昭和23.9.28基災発第176号

*4:昭和24.9.12基災収第5119号

*5:昭和31.4.21基収第6132号

*6:昭和25.3.29基収第115号

*7:昭和26.1.13基収第3295号

*8:昭和30.12.24基災発第169号

*9:昭和24.5.19基収第2960号