ぽんの日記

京都に住む大学院生です。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

劇場アニメ『ぼくらの七日間戦争』

観終わった後、カタルシスよりもむしろ闇が強い。病んでるのか。病んでるのは作品ではなく私か。

でもむしろノベライズを買おうかという気にもなったよ。

(ネタバレあり)

7dayswar.jp

 

 

 

 

私は鑑賞前にはあまり情報を仕入れずに行く。先に期待値を作ってしまうと、その基準より上か下かで判断してしまう。それよりはあまり期待も持たずにいったけど結構面白かった、というほうが断然いい。

本作に対しても、上映前の姿勢はそう変わらない。

ただ、原作がある。私は「ぼくら」シリーズをほとんど読んではいいないけれど、シリーズ最初の『七日間戦争』だけは読んでいた。

そして本作はその『七日間戦争』が原作だということになっている。だからその雰囲気を期待するところが少なからずあった。

 

 

そんな期待は抱かないほうが良かった。そのほうが楽しめた。

 

 

主人公がウジウジ系で始まったものだから嫌な気がした。子どもを無邪気だと捉えるのは単純化かもしれない。でも子どもっぽい素朴なワクワク感を魅力に思い、それを期待したも事実だ。原作の中学生が映画では高校生になったからって、いきなりこんな根暗(ねくら)になるとは考えてもいなかった。

 

不法滞在の子どもが登場して「そっちに行ってしまったか」と嘆息しそうになった。そういうのいらない。社会性とか求めてない。社会派作品を観たかったら、そういう作品を観に行く。本作に期待していたテイストはそういうのではなかった。重い。

原作で描かれていたのは、あくまで子どもの戦争だ。全共闘世代のノスタルジーが多少は漂っていたかもしれないが、それは子どもの憧れみたいなもの、描かれるのは闘争のマネごとだ。

それで十分なのだ。闘っているのはせいぜい親や学校なのだから。社会や国家権力を相手にしてるわけではない。反権力を読み取るのは自由だが、一義的には反発心、反抗期、「子どもだけのアジトを作って抵抗する」という行為そのもののワクワク感。そういうのが魅力だと私は解釈していた。

 

映画はどうだったか。最初に出てきたのは入管だよ。不法滞在の取り締まり。

親や学校へのささやかな抵抗のレベルは完全に超えている。国家権力が相手だ。かわいい子どもの抵抗として笑って済ませられるものではない。

原作ではアジトの外にも内通者がいた。大人全部と敵対しているわけではなかった。それが本作では「大人の事情」やら、政治や権力がやたらと強調されていて、これはもうきな臭い。

 

具体的な「戦争」の描写も危ない。純粋に危険。ケガ人や、下手すれば死人が出てもおかしくないと感じた。ただやんちゃしてたつもりが、死傷者を生む事態に発展するのではないか。ストーリーがそういう方向に行ってしまうのではとヒヤヒヤした。

バリケードをつくるとか、迷路にしてトラップを仕掛けるとか、そういうレベルで良かった。イタズラのレベルだ。子どもの仕組んだイタズラに、大の大人が右往左往する。それを笑うコミカルさと爽快感。そういう展開で良かったのに、これだけ大ごとにしたら、罪悪感、呵責も大きくなってしまう。

 

そしてネット社会の闇。

これは本当にスクリーンから目を背けたくなった。原作と違ってネット社会の現代が舞台になっているとはいえ、ネットの闇の奥底に突き落としてくるかと思った。

情報を鵜吞みにしている奴ら。盛り上がって楽しめばいいという奴ら。情報を晒すことに抵抗を感じてない奴ら。ネットの暴力がつらい。

 

その結果暴かれた登場人物たちの過去もディープだ。そうなるようにメンバーを集めたのか。原作だと「クラスの男子全員で」みたいなノリで集まっていたが、本作ではどういう基準でメンバーが集ったのかイマイチ不明。登場人物たちのつながりがちょっと謎。脚本上、この暴露大会が強烈になるように設定したんじゃないかと思えてくる。

あまり知らないクラスメートだったけど、実は意外な特技があって…的なベタでありきたりな展開をしてくれれば私は十分だった。そういうのを期待するところがあって、それで満足できていたと思う。なぜかくも個人の抱える闇みたいな方向に行ってしまうのか。中学生から高校生になるだけでだいぶ病むな。人間の業みたいなテーマでも描きたいんですか。

 

暴露大会の後の告白大会は良かった。ようやく青春ドラマっぽくなった。「これがスタートだ」みたいな青臭いセリフもいい。やってきてしまった結果を鑑みて、「スタート」というには遅きに失した感は拭えないが。どうやって片付けるんだよ。

 

しかし劇中で片付ける気はなかったようだ。広げた風呂敷を畳まないかのような終わり方。

負傷侵入、器物損壊、障害、公務執行妨害……ネットで顔も実名も晒され、で大丈夫なのか。「戦争」の経験者を登場させて、「なんとかなる(実体験)」で幕引きを図るのか。あなたのころはネット社会でもなかったし、闘いの規模も違うのではないか。不安しかない。

というか不法滞在どうなったんだ。元凶の根本問題だと思うのだが、その結末には触れずか。最後に来た人が実は人権派弁護士で、みたいな設定があったりするのだろうか。

 

その辺のくだりはラストのキスで誤魔化された気がする。これも主人公と意中の相手ではなく、子どもがするとはね。ロリショタ(雄んなの子)需要狙いか。

これに関しては可愛かったから許す。

・・・いや、そうじゃなくて〈その後〉が描かれなかったのが気がかりこの上ない。ヒロインの「行ってきます」の一言くらい。エンドロール後にエピローグがあるのかと期待したら何にもなかった。

 

後味。。。

この後味が気になるので、むしろノベライズを購入しようかという気になっているよ。

あ、そうか。実写版を観ればいいのか。未見だからな。