ぽんの日記

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使用停止命令等処分

労働安全衛生法第98条、第99条、寄宿舎については労働基準法第96条の3に規定があります。労働災害を防止するために、作業の停止や設備等の使用停止を命じるものです。

 

労働安全衛生法の第98条と第99条を見ておきます。

両条文の違いは、前者が危害防止基準の法令違反があるときなのに対して、後者は違反の事実がない場合でも、「急迫した危険」かつ「緊急の必要」がある場合には命じうるというところです。

命令は都道府県労働局長または労働基準監督署長が行いますが、第98条については急迫の場合には労働基準監督官が代わって発することができます。

 

事業附属寄宿舎の場合、労働基準法第96条の3の規定では、法令違反がない場合には使用停止命令等を出せないように思えますが、行政通達により、安全衛生法の第99条の「労働災害」には寄宿舎における労働災害を含むこととなっているので、これでカバーされているということでしょう。(昭47・9・18基発第602号)

 

命令等処分の場合には、関係行政機関との連絡調整や通知も行われることとなっているようです。*1

 

以下、安全衛生法から引用。

(使用停止命令等)

第九十八条 都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、第二十条から第二十五条まで、第二十五条の二第一項、第三十条の三第一項若しくは第四項、第三十一条第一項、第三十一条の二、第三十三条第一項又は第三十四条の規定に違反する事実があるときは、その違反した事業者、注文者、機械等貸与者又は建築物貸与者に対し、作業の全部又は一部の停止、建設物等の全部又は一部の使用の停止又は変更その他労働災害を防止するため必要な事項を命ずることができる。

2 都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、前項の規定により命じた事項について必要な事項を労働者、請負人又は建築物の貸与を受けている者に命ずることができる。

3 労働基準監督官は、前二項の場合において、労働者に急迫した危険があるときは、これらの項の都道府県労働局長又は労働基準監督署長の権限を即時に行うことができる。

4 都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、請負契約によつて行われる仕事について第一項の規定による命令をした場合において、必要があると認めるときは、当該仕事の注文者(当該仕事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該注文者の請負契約の先次のすべての請負契約の当事者である注文者を含み、当該命令を受けた注文者を除く。)に対し、当該違反する事実に関して、労働災害を防止するため必要な事項について勧告又は要請を行うことができる。

第九十九条 都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、前条第一項の場合以外の場合において、労働災害発生の急迫した危険があり、かつ、緊急の必要があるときは、必要な限度において、事業者に対し、作業の全部又は一部の一時停止、建設物等の全部又は一部の使用の一時停止その他当該労働災害を防止するため必要な応急の措置を講ずることを命ずることができる。

2 都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、前項の規定により命じた事項について必要な事項を労働者に命ずることができる。

 

 

件数の推移です。出所は『労働基準監督年報』

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製造業と建設業がほとんどを占めており、近年は年間5~6千件付近で推移しています。

1970年版の年報の注釈によれば、「使用停止等命令処分」は「使用停止」「その他の措置」「即時是正」を指し、 「その他の措置」は「変更措置、立入禁止措置、作業停止措置等使用停止措置以外のもの」、 「即時是正」は「臨検監督中に使用停止等処分対象の法違反を是正したもの」とされています。

 

 

事業場数だけ見てもわかりづらいので、割合にしてみました。前記の使用停止等処分事業場数を定期監督実施事業場数で割って、割合を出したものです。

 

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全業種計の数字で見ると、一番高かったのが1968年で3割を超えています。直近だと4%ほどです。

60年代末は安全基準の違反事業場率が5割近い高さでありましたが、命令処分を受ける割合も高かったといえるでしょう。 近年の安全基準の違反率は2割程度ですが、使用停止等の処分がなされる頻度は減っているようです。

 

 

年報では「使用停止等処分」と「緊急措置命令」を分けて記載しています。後者が安全衛生法の第99条の命令ということでしょう。

前者に比べると、命令件数はごく少なくなっています。

 

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*1:安全衛生法第98条・第99条の命令については、必要に応じて事前に関係行政機関と連絡調整、同法第99条の命令を発したときは、関係行政機関に通知(昭47・9・18基発第602号)