大学入試だと偏差値とか倍率とか話題になるのに、大学院ではそういった数字が出てこないと思いません? 偏差値はともかく入試の競争倍率はどれくらいなのだろうかとネットで調べようとしても、あまり出てきません。
大学によっては大学院の競争倍率についてもHPに情報を載せているところがあるようですが、全体としてはオープンになっていないようです。
HPでの公表状況
京大の学部入試については入学者選抜実施状況が大学のHP上に公開されています。
一方で、同様の情報は大学院については公表されていないように思います。
データで見る京都大学というページでは学生数や入学者数については判明しますが、定員数や入学志願者数が不明なので、競争倍率を計算することができません。
入試情報ではなく自己点検・評価のページを見ると、多少言及があります。
平成24年度 自己点検・評価書の中の「観点4-2-①」では、「実入学者数が,入学定員を大幅に超える,又は大幅に下回る状況になっていないか。また,その場合には,これを改善するための取組が行われるなど,入学定員と実入学者数との関係の適正化が図られているか。」という項目があります。*1
修士課程については、全学の定員、志願者数、入学者数、充足率について記載されています。一方で各研究科ごとの数字はありません。
評価書では
修士課程については,……実入学者数は入学定員と比較して適正な数となっている。また,各研究科(専門職大学院を含む)についてみても,……全体としては,概ね適正である。(ただし,一部の専攻については実入学者数が入学定員を大幅に上回る状況や,下回る状況が見られる)
と書かれており、「一部」がどこを指すのかは明らかではありません。
情報開示請求
そういうわけで仕方なく情報開示請求をしてみることにしました。
京大は国立大学法人ですので、独立行政法人等情報公開法の対象となります。
京大ですと時計台の建物の一番隅っこに情報公開窓口があります。ここで情報公開の手続きをすることができます。
開示請求手数料は300円です。
開示請求をしてから4日後に、請求内容について電話で問い合わせを受けました。*2
ちなみに、私の記憶が正しければ、というかスマホの履歴を確認する限り「非通知」で電話がかかって来ていました。京大って非通知なんですね。
もともと「可能であれば各研究科の各専攻ごと」という形で請求していたのですが、「専攻ごとの内訳がなくてもよいなら、研究科ごとの入試実施状況を一覧にしたものがある」ということだそうで、もし専攻ごとに知りたければ個別に研究科に問い合わせなければならない、という話をされました。
とりあえず、専攻ごとの細かい状況まではいいかなと思いましたので、それで手続きを進めてもらうことにしました。
連絡が早い段階で来て、すでに資料を確認済みのような口振りでしたので、割とすぐに開示決定が出るのではないかとも期待しましたが、そんなことはありませんでした。
情報公開制度では請求後30日以内に開示・不開示決定を出すことになっていますが、今回の件で開示決定が出たのはほぼ30日後でした。*3
開示実施手数料40円でした。*4
データについて
博士後期課程についても情報開示をしましたが、ひとまず修士課程について見ていきたいと思います。
1998(平成10)年度以前の数字については、『京都大学百年史 資料編3』に記載があるため、情報開示請求では平成10年度以降の入試の実施状況について請求していました。
しかし結局2002(平成14)年度以前のものについては出てこなかったため、この期間は空白となります。
先に述べたように入学者数についてはデータで見る京都大学というページに記載があります。
ところが2010年度入試以降について、開示を受けた文書に記載されている入学者数とHPで公表されている入学者数に、食い違いがある箇所がいくつか見受けられます。
開示文書によれば、そこに記載されている数字は「秋期入学者を対象とする選抜」を含めていますが、HPでの公表されているものについてはそのような説明がありません。
したがって入学者数の違いは秋期入学者の違いだと考えられます。
開示文書で明らかになった入学定員、志願者等についても秋期入学を含んでいますので、入学者のデータについても開示文書の数字を優先して使います。
募集人員
開示請求をしてみて、「入学定員」と「募集人員」が違うものだということを知りました。
開示文書では、2002~2009年度入試において、入学定員とは別に募集人員が記載されています。多くの研究科では定員と募集人員は一致していますが、工学研究科や農学研究科では定員を上回る募集人員となっています。
2010年度以降は開示文書に「募集人員」が記載されなくなっています。また京都大学百年史においても「募集人員」の情報は記載されていません。
計算方法は一貫させたかったので、以下で算出した充足率では「定員」のほうを用いて計算しています。定員と募集人員が異なる可能性があるということを頭の一隅に入れておいてください。
競争倍率
本当は志願者数が合格者数の何倍かを出したいのですが、開示文書では合格者数が分かるのは2010年度以降に限られます。それ以前については「入学許可者」として記載があるのですが、どうも合格者ではなく入学者数を計上しているように見受けられます*5。
また百年史の資料では合格者数がなく入学者数のみが記載されています。
そこでここでは「志願者数÷入学者」、すなわち志願者数が入学者数の何倍にあたるか、を競争倍率として計算しました。
まず、文系の大学院。
70年代の経済学研究科の倍率の高さが目立ちます。
そのころと比べると減少してますが、どの研究科も約2倍以上の倍率はあるようです。
やはり70年代で倍率が激しいですが、突出しているのは理学研究科です。
近年は2倍を下回っており、文系より競争倍率が低くなっています。
90年代以降に設置された研究科です。
こちらも2倍付近ですね。
専門職大学院は2004年以降になります。
法科大学院は割とマスコミ報道が多いと思いますが、京大でも倍率は低下傾向ですね。
定員充足率
定員充足率は「入学者÷入学定員」の%です。
これはもう、定員の概念が変わってますよね。
かつての法学研究科、経済学研究科は充足率4割を下回ってます。これはもはや定員割れとかではなく、そもそも定員分入れる気が無いんでしょう。さきほど募集人員と入学定員の数が違うという話をしましたが、当時は定員分募集をかけてなかったのではないでしょうか。
それが90年代以降になって、ちゃんと定員分採るようになったと。そんなところではないでしょうか。
続いて理系ですが、これも「定員」が厄介ですね。
理学研究科の充足率が低く推移してますが、前述のように、競争倍率が激しかったのが理学研究科(とくに70年代)ですから、これも定員割れというよりは、定員より数を抑えていると見たほうがいいのではないでしょうか。
一方で、かつての工学研究科は充足率が150%ですこぶる安定してます。これも定員の1.5倍くらいの人数を募集し、合格者もそれくらい出していたのが常態化していたのでしょう。
法科大学院は充足率という意味ではものすごく安定してますね。
同じ専門職学位課程でも、医学研究科の社会健康医学は変動が大きいように見えます。
外国人留学生割合
最後に入学者数のうち、外国人留学生が占める比率です。
法学研究科と経済学研究科の突出ぶりが目を見張ります。入学者の7割が留学生ということで、日本人はもはや少数派となっています。
私が今割り当てられている共同研究室は9人中7人が留学生(中国が6)となっていますので、実感としてもそんなものかなと思ったりします。
理系の場合は文系より比率が低くなっています。
ただ、それでもここ数年はその伸びが大きくなっているように見えます。
先ほどと比べると高くなっています。とくに地球環境学舎はここ10年で一変といえるほどの増加ではないでしょうか。
法科大学院はそもそも留学生の志願者がほとんどおらず、入学者数は0人が続いています。
急増を示しているのは経営管理大学院。経済学研究科、法学研究科には及ばないものの、著しい増加ぶりです。グローバル化(?)の表れですね。
*1:平成27年度 自己点検・評価報告書には同様の項目はないようです
*2:6/7に開示請求の手続きをし、6/11に連絡を受けた。土日を挟んでいるので2営業日後という計算になる
*3:開示決定通知を受けてから窓口もしくは郵送で開示文書を受け取ることになります。私は7/9(月)に窓口にて文書をいただきました。
*4:文書の枚数に応じた基本額を計算し、その基本額から開示請求手数料(300円)を引いた金額が開示実施手数料となります。今回開示した文書はA4で30枚、うちカラーコピー2枚でしたので、基本額は340円でした。
*5:HPで公表されている「入学者」と開示文書での「入学許可者」の数が一致している例が多い