労働行政が就業規則の指導に力を入れだすのは80年代ごろからと思われます。
1982年2月8日の日経産業新聞に「労働省、中小零細企業が多い第3次産業向け労務管理マニュアルやモデル就業規則作成。」と題された記事があります。
労働省は五十七年度から三カ年計画で、第三次産業でも中小零細企業が多い業種の労務管理マニュアルやモデル就業規則を作成する。サービス経済化が進み、第三次産業の雇用は増える一方だが、経営基盤が弱く労働者の就業形態や就業時間などが多様であることから組織的な労務管理も進めにくい。そこで、業種別にきめ細かな労務管理マニュアルやモデル就業規則を作り、中小企業経営者に役立ててもらうのがねらい。
常時10人以上の労働者を雇う事業場は、必要な事項を記載した就業規則を作成し、労働基準監督署長に届け出る義務があります(労基法89条)。
就業規則(変更)届の件数、および定期監督での89条違反の件数の推移は以下のようになります。
届出は1964年以降のみです。
両者の数字は文字通り桁が違うので、あまり並べて見せる意味はないかもしれませんが、何となくトレンドが掴めるかと。
前述した日経産業新聞の記事では、モデル就業規則を作成してそれを活用する話が出てきますが、そのころから就業規則の届出件数が増加に転じているように思います。
89条の就業規則違反の事業場数は90年代頃に急伸した後、また徐々に下がっています。違反が増えたからモデル就業規則云々というよりは、このころから就業規則の指導に力を入れるようになったということなんでしょう。
60年代末も違反が多くなってますが、これもなにかあったのでしょうか。
労基法92条では「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない」となっています。
労基署長はそのような就業規則に対して、変更命令を出すことができます。ただ実際のところは変更命令が出されることはあまりないようです。
是正勧告で対応できるているから、命令を出すまでには至らないということでしょうか。
1992年に32件の命令が出されて以降は、ほぼ0件が続いています。95、98、2005、07が1件、2010年が2件です。