ぽんの日記

京都に住む大学院生です。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

常見陽平『僕たちはガンダムのジムである』

この本の最大の難所は、著者が常見陽平であることだ。

 

本書を購入したのはもうずっと前。積ん読というか、読まないまま本棚にあったままにしていた。

改めて検索すると、2015年の末に日経ビジネス人文庫から新しく出ている模様。手元にあるのは2012年にヴィレッジブックスから出たほう。そう思うと、数年間読まないままで放置していたのだな。

 

読まなかった理由が具体的にあるわけではないけれど、一番大きいのはタイトルの出オチ感だと思う。中身まで読まなくても、書名そのままの内容なんだろうと早合点してしまうことと、そして私はガンダムをほぼ見ていないこと。

 

 

 

ずっと読まないまま放置していたわけだが、その状況が本書の性格を表してもいると思う。つまり、大きな挫折とか諦念を経験したことないヤツはこんな本読まない。イケイケどんどんであるうちは本書を読もうとすら思わないだろうし、読んだとしても別に響かないだろう。

 

諦めさせてくれるというのを、私はどこか期待していたのかもしれない。

特別な素質や才能がなくても、そしてそのことを薄々自覚していたとしても、それでも「普通」であることに我慢できない人は少なくはないと思う。

はっきりさせるのが嫌なだけで、別に自覚はしているのだ。自分はガンダムでなくジムなのだと。それでも、そう簡単にはその事実を受け入れたくはないとも一方では思ってしまうのだ。

 

身の程を知って生きればいい。そのほうが楽しく過ごせるかもしれない。そんなことを頭の片隅では考えながらも、自分で作った自分のしがらみがそれを邪魔するのだ。

 

それを断ち切ってくれるような、ガツンとした一撃をだから期待していたのかもしれない。ジムのくせにガンダムになる夢なんか見るなと、そういう宣告を求めていたのかもしれない。

 

本書はそれを裏切る。

いや、これは私の読み方が悪いのだろう。ただし読解力に起因するというよりは、著者が常見陽平であることが大きい気がする。

 

本書の第3章は「僕たちジムのための人生戦略」というもの。私にはこれが巷間あふれる自己啓発の類と区別がつかない。

それを常見陽平という人物が語る。どんなにへりくだって語ってみせようとも、世間的に見れば「成功者」であろう。カネをたくさん稼いでいるかどうかではない。社会的評価をされつつ、自分の生き方をし、そこそこ稼いでいるのなら、それはやっぱり「勝者」「成功者」だ。

その人物がジムのための生き方を説くのだから、それをありがたく頂こうとは思わない。

 

処世術なり人生論なりを垂れることを否定したいのではない。

ただ彼は自分の実践としてどんなことをしているかを語ってしまっている。もちろん、そういうことをそもそも語る本ではある。しかしそういう匂いを今の私は嫌ってしまう。

著者にそうした意図がなくても、幻想を見させてしまう。常見陽平の(ような)ポジションに行けるかもという幻想である。それはしかし「ガンダムの夢」そのものではないか。もう分不相応な幻想を追いかけてもしかたがないと、そう感じて手にした本書を締めくくるのがそれか。

 

常見陽平以外の者が書けば解決する問題ではないのは承知だ。自分より相対的に「成功」した人が書けば、上記と同じ構造に陥るだろう。逆の立場の人間が書いたのなら、それはそれでただのルサンチマンをぶつけているだけだと感じてしまうだろう。

本書の難点は常見陽平だと書いたのは結局、解けない知恵の輪を持ち出したようなものだ。著者や本書の落ち度では全くないのにそう書いてしまったのは謝っておこう。

 

www.hanmoto.com

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