ぽんの日記

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浜田寿美男『虚偽自白を読み解く』

興味深い。「自白」というものがどのように作られていくかを、その心理に迫りながら活写している。

冤罪事件が生まれることが不幸にして起こりうることを知ってはいる気でいたが、これはもっと認識を改めるべきレベルかもしれない。

 

 

「従来の虚偽自白モデル」を批判し、丁寧に自白の過程を検証している。冤罪事件のそれぞれを例外として扱うのではなく、そもそも自白とは何かというところまで考えさせてくれるような内容だ。

冤罪事件は大きく報じられるものでもあるから、「自白」から否認に転じるそのさまを、ニュースとしては知ってはいたはずだけれど、そこでイメージしてしまうのは「従来モデル」に近いものなのだな。「虚偽自白」の心理は、なるほど実際に体験せぬままの想像だと、分からない部分が多い。冤罪を立証しようとする弁護側でさえ、「従来モデル」に囚われうる。

このような「虚偽自白」モデルが裁判官たちの間で浸透してくれれば、刑事裁判の状況ももう少し改善するだろう。

 

 

それにしても自白調書というのはこんなにも酷いものなのか。

取り調べ時の録音テープと自白調書を比較検討した箇所が本書に出てくる。見ると、もうほとんど捏造と言って良いのではないかと思うほど。このレベルでインタビューの書き起こしをして論文でも書こうなら、大目玉を食らわなきゃおかしい。

刑事裁判の証拠として尊重されるものなのに、その粗末さに閉口する。

 

著者は本書の最後の部分で、「虚偽自白」と「冤罪被害の演技」の判別について語っている。

ただ、新書1冊分読んできただけの感覚から言っても、自白調書を恐ろしいものだと思わずにはいられない。正直、自白調書を証拠として採用すること自体を止めるくらいの根本的な変革をしてほしいのだが。

それはダメなんだろうか。