ぽんの日記

京都に住む大学院生です。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

バイトの年休

年次有給休暇。有給と略すか、有休と略すか問題があるので、年休と略します。

 

非正社員の年休取得率は?

 

就労条件総合調査』では、年休について、企業全体*1の「延べ」日数を調査しています(調査票は下のとおり)。だから一人当たりの年休取得率は出せますが、労働者ごとの細かい状況は分かりません。

そのため産業や企業規模別の比較はできますが、労働者の職種ごとだったり、雇用形態別には分からないのです。

 

そう、非正社員が年休をどれくらい取れているかが把握できません。

 

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出所)平成31調査の調査票より

 

正社員と非正社員で年休取得率が違うとすれば、これは実態把握としては不十分と言わざるをえないでしょう。もしこの調査が正社員のみを対象としているのであれば、(非正社員は調べなくていいのかという論点を置いておけば)雇用形態による違いという問題は考えなくて済みます。

しかし『就労条件総合調査』は「常用労働者」(パートを除く)が対象です。この調査では、「常用労働者」とは「1か月以上の期間を定めて雇われている労働者」を指します。ということはパートタイム労働以外の非正社員は、調査対象に含まれると解されます。

 

これって単純に考えて、比較を難しくしていると思うんですけど、どうなんでしょうか。産業別に比較したり、あるいは年休取得率の年次推移を見たりする際に、それが非正社員比率の変化によるものなのかが分からないんではないでしょうか。

 

 

さて、そもそも非正社員の年休取得率を調べようと思ったのは、「アルバイトの年休取得率ってどの程度なんだろう」と素朴な疑問が浮かんだからでした。

しかしながら『就労条件総合調査』はパートを調査対象にしていないので、この疑問には答えてくれません。

 

別の公的統計としては『社会生活基本調査』が使えそうです。この調査では2011年から、年休の取得日数の調べられるようになりました。先ほどの『就労条件総合調査』との違いは、企業ではなく世帯に調査していることです。これにより、労働者の側から取得日数を知ることができます。

ただし付与日数は調べられていませんし、階級値での回答となっています。そのため、取得率を計算することはできません。

 

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出所)『社会生活基本調査』調査票A

 

雇用形態についても調べられているので、個票集計すれば雇用形態別の年休の状況も把握は出来るかと思います。が、残念ながらe-statで公表されている集計表だと、雇用形態別の集計はなかったように思います。

 

フルタイムと短時間勤務については表があったので、グラフにして見ました。雇用されている人についての回答です。

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出所)『平成28年社会生活基本調査』調査票Aに基づく調査結果、生活時間編―全国、第13-28表より作成

 

 「調査票を記入する前に」によれば、

今の仕事について1年未満の人や,育児,介護,病気療養のためこの1年間に 長期にわたって休暇をとっていた人は,「その他」とします

 とのことです。

 

ぱっと見、年休取得率が5割というのも怪しいですが、パートタイムの過半数が「ない」と答えているのが特徴的ですね。年間所定労働日数が48日未満の人がこれだけいるということではないでしょう*2

単に取れない、取らせてくれないなら「0日」と回答するはずですから、「知らない」「知らされていない」が圧倒的に多いということでしょう。

 

 

年休を請求してみた話

個人的な話になりますが、この前バイト先ではじめて年休を取りました。

なんで今まで年休を取ったことがなかったかと言えば、シフト制のバイトだからですね。勤務の都合がつかない場合は、ほかの人と勤務日を交代してもらうことになっていました。「休む」というよりは、シフトの調整ということになります。

 

ところが今回、交代の都合がつく人がいないという事態になりかけました。こういう場合に休むときにどういう手筈になっているのかは実はよく知らず。私が知らないだけかもしれませんが、交代してくれる人が見つからないけど休むという人を見たことなかったので*3

 

それで、この際ついでと思って、年休の取得についても質問してみたのでした。

 

 

いや年休で休むだけならそう伝えれば法律的にはOKだと思うんですけど、そもそも私は何日分の年休があるのかという問題がありまして。繰り越しの話ではありません(それもあるけど)。

 

勤め先の就業規則を確認するとですね、厚労省の作っているモデル就業規則*4と違って、「所定労働日」という言葉でなく「勤務日」という言葉が使われています。

「勤務日」って所定労働日って意味なんでしょうかね? 労基法的にはそうなんでしょう。

 

こんなことを考えたのは、所定労働日ではなく、実際の勤務日数で計算してくれれば、年休の日数が増えるからでした。というのも、所定労働日以外の勤務日が一定数あるためです。

具体的にいうと、まず所定労働日数が年間で62日です。そして、これとは別に所定外の扱いで月5日程度の勤務があります。所定外ではありますが、毎月一定の勤務が見込まれるので、感覚としては所定労働日と大きく異なるところはありません。

 

その所定外労働日を足せば、年間の「勤務日」は73日以上になります。パート労働者の年休は所定労働日に比例して付与されるわけですが、雑に言えば、73日未満と73日以上では付与日数に倍の差があります。

ですから就業規則の「勤務日」を所定労働日と解すか、実際の勤務日と解すかで付与される年休の日数が変わるのではないか。私の場合1年6カ月以上勤務しているので、前者であれば2日、後者であれば4日になります。そんなことを考えたのでした。

 

ちなみに就業規則には、「前項の全勤務日は……勤務を要する日のすべてをいうものとし……」との文言もあります。

 

労基法は「年休は所定労働日で計算しろ」と言っているのか? つまり、もし「実際の勤務日数で計算する」という就業規則があった場合に、それは「所定労働日」と読みかえられるのか。

もとはといえば、毎月一定の勤務があるのに、所定「外」とされている労働日があることが話をややこしくしているとも言えます。この所定「外」の日は年休を請求できるのか、とかね。

 

確認したところ、私の言い分はやはりというか通らず、所定労働日で日数は計算されました。

 

 

ところで、年休を取った場合にいくらもらえるのか、平均賃金なのか所定労働時間分なのか、についても就業規則に記載がなかった気がします。

 

平均賃金(労基法12条)を計算してみると、

直前の賃金締切日から3か月の総日数 31(12月)+31(1月)+28(2月)=90日

所定賃金額 (13+16+19時間)×1,200円(時給)=57,600円

所定外 (5+5+5日)×3時間×1,200円*5=54,000円

平均賃金(賃金総額÷総日数) (57,600+54,000円)÷90日=1,240円

 

これで計算合ってますかね?

改めて見ると、12月は所定外分のほうが賃金が多かったのか。

 

時間給のバイトですので、平均賃金のほうで年休手当を計算されたら不利になります。

(賃金総額を労働日で割れば、111,600円÷30日=3,720*6 だから最低保障額はその6割の2,232円。所定労働時間分なら1,200円×3時間=3,600円)

 

 

 

 

 

*1:調査対象は常用労働者30人以上の民営企業

*2:平成29年就業構造基本調査によれば、非正規の職員・従業員のうち、年間就業日数が50日未満なのは5.1%、アルバイトに限っても11.5%です

*3:交代してくれる人が見つからないということ自体は労働者側の責任ではないはずですから、それで休めないなんてことはないのでしょうが。

*4:モデル就業規則では年休は第5章22条に規定

*5:所定外だが法定内なので割増はない

*6:所定労働時間が3時間の日と4時間の日がある