ぽんの日記

京都に住む大学院生です。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

学術書は高いクセに……

私は読書していて、比較的よく誤植を見つけるほうだと思う。

論旨に影響のないレベルの誤植はそれほど気にすべきでないのかもしれないけれど、やはり目についてしまった以上は気になる。あえて間違って表記する芸当家もおられるのかもしれないが、基本的には誤植なんてないほうがいい。形式的な部分で本の評価を下げる。

 

残念なことにというか、一般文芸書や文庫・新書より、学術寄りの本のほうが誤植が多いように思う。これは完全に私の観測範囲の話だからバイアスはあるかもしれない。だが経験的に言って後者のほうがはるかによく誤植を見つける。

 

一般書と学術書では校閲の手間やプロセスが異なるのかもしれない。もっとも、それは読者の知った事情ではない。数千円払って買った本に誤植が多く、数百円の文庫や新書ではあまり誤植がないというは、ちょっと理屈に合わない。高い金を払ったほうが品質が高いと考えるのが普通のはずだ。まさか誤植の量は品質とは無関係だというわけではあるまい。

むろん、誤植が見つかったというだけで内容的評価を貶めるつもりはない。しかしストレスは溜まる。単純な話、誤植が多いほど本として読みにくい。

 

 

最近読んだ本だと、櫻井幸男『グローバリゼーション下のイギリス経済』(法律文化社、2018年)の第2章がとくにそうだった。

 

ざっと書き留めたのだが……

93頁 図2-1-1

 横軸の年号が1か所抜けている。その後1975、77、80と続いているから1972年か?

 

94頁 図2-1-2の一番下のグラフ

 右側の軸はいらないのでは?

 

100頁「日本はイギリスの3分の1未満の労働費用」

 表2-2-3を見ると、イギリス100に対して日本69となっているけど?

 

102頁 図2-2-1

 単位が「ドル」となっているけどほんとに? 基準時点を100とした指数のグラフに見えるけど。

 

104頁「1960年のその大きさは11億5400ポンド」

 表2-3-1通りなら11億5400「万」ポンドだ。

 

106頁「1985年には再び45億400万ポンドとなり」

 表2-3-3の通りなら450億4000万ポンドだ。

 

107頁「450億400万ポンド」

 同前

 

107頁「1990年の1715億5000ポンド」

 表2-3-4の通りなら1715億5000「万」ポンドだ。

 

107頁「イギリスにおける海外からの投資ストックは1994年に『1986年に520億ポンド近くから1310億ポンドにまで上昇し』」

 引用の仕方おかしくね?

 

109頁「イギリスのGNP比率に対するアメリカの対内直接投資の比率……1980年の6.0%にまで低下しているが、1985年に6.5%に押し戻し」

 イギリスのGNPに対するアメリカの対外直接投資? なお、106頁では「対英投資のGNP比率でそれの大きさを見ると、それは1970年にはピークの7.5%となり、それ以降低下し始め、1980年に6.0%、1985年に6.6%であった」と書いている。1985年の数字も違う。

 

110頁 表2-3-5

 表タイトルでは「産業別」となっているのに、表中では「部門別」となっている。

 

111頁「在英投資」

 対英投資?

 

113頁 表2-3-7

 イギリスとアメリカで「直接資本の出資額」と「直接投資出資額」と表記が違うけど、別のものなの?

 

114頁 表2-3-8

 ドイツは流入aと流入bと2つあるけど、その説明がない

 

130頁 本文中の「図2-5-1」

 これは表2ー5ー8を指してるよね?

 

135頁「独立のイギリス企業(2万901社)」

 表2-5-10だと「独立のイギリス企業」は12976となっている。

 

139頁 表2-6-1「UIK輸出」

 UK輸出のことか。

 

そのほか気になったのは、まず海外直接投資(FDI)の記述の仕方。

途上国への対外FDIでは、1980年で80億ドル……。途上国への対内FDIでは対外のそれと……

(92頁)

なんで対外FDIと対内FDIがどっちも「への」なんだ。片方が「への」だったらもう一方は「からの」じゃないの? 91頁の世界の対外FDIストックが増大趨勢の話をしたあとで、対内FDIストックも同様だという話も必要なのか。「世界の」であれば対内と対外の趨勢はそりゃ一致するのでは?

 

また、106頁と107頁に記載されている表2-3-2と表2-3-3も、これって2つとも載せる必要あるのだろうか?

前者は「対英海外直接投資額」の表で、後者は「1982年~89年の対英海外直接投資額」。前者の表には1971~80年の累積額、1981年から1990年までの各年の額、1981~90年の累積額が載っていて、後者の表で得られる情報を包含している。改めて後者の表を出す必要あるのか。強いて言えば前者はドル表示で後者はポンド表示という違いがある。為替の要因でなにか違うのか? 本文ではそうした説明はない。むしろ同じ話をしているはずなのに、途中でドルからポンドに変わっていてわかりにくい。

 

 

大学教育だとしばしば「本に書いてあることがすべて正しいと思うな」的な指導があるけど。

いや、こういう意味で間違いが多くてもさ。。。

上に上げたのは、よく読めば気づく間違い。専門的すぎるということではない。だから出版社側のチェックの問題だと思うんだけど、学術書のほうが校閲は入らないのかな。