ぽんの日記

京都に住む大学院生です。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

数字の縦書きの話

某文庫本を読んでいたら「二千十九年」という表記が出てきたので驚いた。なんでこんな表記したんだ? 普通に読みにくい。

縦書きだから漢字表記にしたのだろうが、それなら「二〇一九年」だ。 

この人は一九九九年を千九百九十九年と書くのだろうか。書いちゃうんだろうな。

 

そもそも縦書きの文章であっても、漢数字じゃなく普通に洋数字(算用数字)を使えばいいじゃん、と思う。

昔だったら「縦書きなら漢数字」って人も多かったのかもしれないが、最近は受け入れる人のほうが多いのではなかろうか。

 

たとえば岩波新書でも、縦書きの文章ながら洋数字を使っているものがある。ルポ・ジャーナリズム系、自然科学系の一部か。最近のものだと『バブル経済事件の深層』は漢数字ではなく洋数字を使用していた。

これは著者がジャーナリストということもあって、すでにそういう書き方が標準的になっているのかもしれない。

というのも、新聞はすでに原則洋数字の書き方に変わっているからだ。

 

新聞もかつては漢数字表記が原則だった。見出しや横書きの表などで洋数字を使っている例はあったが、本文は西暦や日付なども含め、漢数字で書かれるものだった。

試みに、新聞紙面で数字表記が漢数字が洋数字に切り替わったタイミングを調べてみると、毎日新聞の1996年4月が早いようだ。

 

朝日新聞が2001年4月、読売新聞が2005年3月、日経新聞は2009年6月からとなっている。もっとも、日経は金額なども含めて漢数字表記だったが、読売は「これまでは、金額・年齢などに限って洋数字を使」っていたなどの違いはある。

 

 記事の数字表記を原則として洋数字化します。これまでは、金額・年齢などに限って洋数字を使い、そのほかは漢数字表記を主体としていましたが、これを変更します。洋数字化で日時や数量などデータが読みとりやすく理解しやすくなります。

(読売新聞2005年2月25日朝刊1面「春の新紙面」)

 

 

毎日新聞1996年4月1日朝刊1面

 

f:id:knarikazu:20190912145618p:plain

 

日経新聞2009年6月1日朝刊1面

f:id:knarikazu:20190912145931p:plain

 

 

 

 

ところで日経新聞と時を同じくして、地方紙も一斉に洋数字に切り替えたようだ。〈池上解説〉によれば共同通信社の方針変更に合わせたものらしい。

全国紙は以前から洋数字を多用するようになっていたのですが、今年6月1日から地方紙も一斉に洋数字を増やしました。地方紙に記事を送る共同通信社が方針を変えたからです。

朝日新聞2009年7月27日夕刊「池上彰の新聞ななめ読み」)

なるほど。そういうことだったのか。

 

京都新聞2009年5月31日朝刊1面

f:id:knarikazu:20190913164611p:plain

 

 

原則洋数字使用は、単純に読みやすさのためだと思っていたが、字数節約という目的もあるようだ。

 ぱっと見た感じ、本紙はずいぶんと変わったと思う。字が大きくなり、洋数字が増えたからだ。

 字の拡大は読みやすくするため。半面、情報量が減ってしまう。字数の節約のため「原則洋数字」に踏み切った。

朝日新聞2001年5月26日夕刊「漢と洋(偏西風)」)

 

2桁までの数字は組み文字で1文字にできる。「一万円」は「10,000円」になるから増えるじゃないか、とはならない。「1万円」と書けばいいだけだから。

もっとも「字数節約のため」と書いてある社告は見つけなかったが。

 

 四月から紙面の基本となる文字を大きくします。いま、お読みいただいているのがその大きさです。情報化、高齢化時代にふさわしく、多量の情報をより早く、より読みやすくお伝えするのがねらいです。
 新しい文字は、これまでに比べ二二・八%面積が広がります。いままで以上にくっきり見えるのがお分かりいただけると思います。印刷が鮮明になり目の負担も軽減されます。
 文字の面積が広がることで、紙面の文字量が若干減りますが、記事本数が減らないよう簡潔に書き、情報を圧縮し、質の高さを目指します。

朝日新聞2001年1月3日「4月から文字が大きく鮮やかに」)

 

 

書籍の場合、縦書きと横書きの比率はどの程度なのだろう。横書きなら当然洋数字だろうが、縦書きでも実用書や新書は洋数字でも違和感ないように思う。

漢数字にこだわるのは文芸作品か。ラノベも今はまだほとんど漢数字原則である印象だ。Web小説も珍しくなくなっているけれど、書籍を買って読む層は漢数字派が多いのだろうか。

電子書籍で横書きで読む場合でも、漢数字はそのまま。熟語や慣用句以外のだけ切り替えないといけないから、難しいのかもしれない。

 

 

ちなみに「労働基準監督年報」は1961年に横書きになった。(誰も聞いてない)