ぽんの日記

京都に住む大学院生です。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

監督官 予算定員

監督官は何人いるのか問題を、当ブログでは何度か取り上げてきました。今回は監督官以外の職員も取り上げていますが、タイトルのことは気にしない。

国の予算データを使って年次推移を確認したのが、新しいとこになります。

 

以前の記事は、これとか。

kynari.hatenablog.com

※以下では簡略のため、(厚生)労働省を「本省」、都道府県労働(基準)局を「局」、労働基準監督署を「署」、公共職業安定所を「所」と記す。「監督官」については、とくに断りのない限りは労働基準監督官を指す。

 

定員と実員

その前にこの話。

定員と実員は異なります。おそらくは実員が定員を下回る事態がずっと続いています。

職員の(予算)定員の充足率の推移がわかる資料を寡聞にして知らないので、証拠は示せませんが。

 

試みに法務省への回答資料を見ます。これは厚労省法務省による照会に対し回答したものです。*1

それをもとに作成したのが以下の図になります。厚労省における特別警察職員とは監督官のこと。

2002-06年という限られた期間になりますが、定員充足率は81.1~85.9%で推移しています。

 

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役職(局・署・所)

予算データは財務省のページで閲覧できます。以下のグラフのデータは全て当初予算で、とくに断りのない限り一般会計・特別会計を合計した数字です。

予算書・決算書 ホームページ

 

 

まず(地方)労働行政全体を見ます。実は「一般職員」の所属別の人数も知りたかったのですが、区別されていなかったので全体の趨勢から確認します。局と署所を区別していないのも同様の理由からです。

 

図 が地方労働行政職員の構成推移です*2。管理職員を含まず、一般職員と専門職を表示しています。凡例は多すぎるのですべての表示は諦めました*3

 

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1979年から80年にかけて段差があります。いくつかの職名が統合されて「職業指導官」となったようですが、不整合になっています。勉強不足ゆえ、この段差の理由の詳細は定かではありません。

 

しかしながら明瞭な趨勢も見て取れます。

第一に一般職員が(ほぼ)消えました。見る影もないくらいです。第二に、一般職員が減少した分ほかが増えています。名前のある職(と仮に呼びますが)が代替して、その結果として全体の職員数が横ばいとなっています。

    

 

役職(署)

職員の人数的には所のほうが多いわけですが、当ブログでは主に基準行政を取り上げてきたので、署に絞って検討します*4。一般職員の所属別が不明なので、下の図では一般職員と監督官を除いて示してました。

 

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役付き・専門職層ですね。70年代末までこの層は増えています。

 

係長~署長クラスに大きな変動はありません。ポストの数に大きくは変化していないからでしょう。

全国の署の数は、発足時1947年に334署、その後漸増しピークは1972年で350署*5。1988年から2001年までは343署+支署4で変化なしでしたが、2005年から07年にかけて339→331→323と削減され、現在は321署(支署4)となっています。

課長以上が減らないのに対し、主任・専門職層は21世紀に入るあたりから減り始めました。

 

監督官はどうか。監督官は2005年度から署所属の予算定員が把握できるようになっています。

全体は増加趨勢ですね。ただし内訳を見ると、時期によって差異があるのが目に付きます。最初の拡大期たる60年代~70年代は一般会計による定員が増えています。その後ここは安定し、増えるのは労災勘定による定員となりました。

2000年代に入るとまたトレンドが変わります。今度は一般会計による定員増加が起き、労災勘定はむしろ減る形となりました。

 

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(号)級

この変化をもう少し詳しく、(等)級別に示します。

なお1985年を境に制度が変わっている点は注意。「8等級」が「11級」に変わり、数字が若いほど下位の級を示すようになりました。

 

図は地方労働局署所の一般職員について見たものです。(等)級制が改革されているので、かつての8等級が1級に相当します。

60年代、全体数が減少する中で6等級の割合は増加しています。一般職員そのものが減少しているのですが、そのなかでは〈上級化〉を確認できるということです。

 

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このような〈上級化〉は監督官においても確認できます(下図)。

80年代までで見ると、一般会計ではまず5等級が増え、その後4等級が増加。労災勘定でも5等級が増加しています。

80年代半ば以降は、一般会計監督官は変化が乏しくなります。労災勘定では低位の級が増えますが、2000年代半ばでトレンドはまたも変わります。一般会計監督官が拡大を見せているのですが、これまでと違って上位の級は増えていません。増加は下位の級が占めており、その大宗は2級となっています。

 

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最後に署所属の専門職も確認しておきます。

圧倒的大部分を占めているのは3級になります。それより上位の級はほんのわずか。かつて一般職員が6~8等級のうちの6等級を多く占めたことを考えると、専門職が級のレベルで上位になっているとは言い難いようにも思います。

 

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まとめにかえて

全体の趨勢として、(数字上は)職員の専門(分)化が進んだ、とも言えそうです。一般職員がいなくなって、それが専門職に置き換わっています。専門職が単純に増員されたのではないので、全体の職員は横ばい(漸減)となっています。専門職化の進行というより、処遇の変化として説明したほうがいいかもしれません。

 

(課長以上の)管理職員は減っていません。全体としては定員削減の圧力がかかっているはずなので、結局専門職についても減員が始まりました。

 

監督官は全体数は増加していました。

60年代からの拡大期では高位の等級で増員しており、方面主任監督官制度ができて、それが多くの署に広がっていくことと恐らくは関係があるのでしょう。この制度が監督体制を充実強化させたのかは、いま一歩検討の余地がありますが。

2000年代以降の新たなトレンドは、低位職の監督官が増えたことでした。これは低位の級に属する一般職員・専門職の縮減していることの裏側なのかもしれません。

 

*1:「特別司法警察職員の人員及び捜査活動状況について(回答)」www.joshrc.org/~open/files/20030717-003.pdfなど全国労働安全衛生センター連絡会議ページで一部見ることができる。

*2:(厚生)労働省所管のうち、本省、社会保険庁、地方厚生局、地方社会保険事務局を除くものである。

*3:下から順に「一般職員」「技能労務職員」「技能労働職員」「技術労務職員」「監督官」「署監督官」「署専門職」「地方労働基準監察監督官」「安全衛生専門職」「安全専門職」「労働衛生専門職」「地方賃金指導官」「地方労働時間短縮促進指導官」「地方機会均等指導官」「機会均等指導官」「労災管理調整官」「地方労災補償監察官」「労働者災害補償保険審査官」「社会復帰指導官」「給付調査官」「地方職業病認定調査官」「通勤災害専門官」「療養給付専門官」「特別加入団体監理官」「地方徴収専門官」「徴収専門官」「労働保険適用指導官」「地方粉じん対策指導官」「労働基準監察官」「所専門職」「地方労働専門職」「産業雇用情報官」「職業指導官」「職業紹介官」「雇用情報専門官」「職業指導員」「就職紹介官」「雇用指導官」「外国人労働者専門官」「高年齢者雇用安定指導官」「地域雇用開発担当官」「介護労働専門官」「労働者派遣事業指導官」「広域就職指導官」「雇用継続給付専門官」「雇用保険給付調査官」「失業保険給付調査官」「地方雇用保険監察官」「地方失業保険監察官」「職業安定監察官」「労働専門職」「専門職」「就職促進指導官」「地方職業安定監察官」「地方職業指導官」「地方雇用計画官」「地方雇用開発担当官」「地方障害者雇用担当官」「地方労働者派遣事業指導官」「地方失業対策事業監察官」「雇用保険審査官」「失業保険審査官」となる。

*4:地方労働基準監察監督官等は署ではなく局所属だと思われるが、合わせて表示している

*5:これは沖縄返還による5署増加を含む