産業医や衛生管理者を選任した場合には、労働基準監督署長に報告する義務があります。なので行政は選任状況を把握しているはずですが、その集計結果は公表されていません。
産業医に関する公的統計としては労働安全衛生調査(実態調査)があります。
2018年だと50人以上の事業所のうち、産業医が選任されているのは84.6%だそうです。
そのほか、医師・歯科医師・薬剤師統計(旧:医師・歯科医師・薬剤師調査)からは、主たる業務として産業医業務に従事している医師の人数を知ることができます。こちらは以前すこし触れました。
一方で、産業医の選任義務違反(安衛法第13条)の是正勧告件数はなぜか伏せられています。これも以前書いたことがありました。
さて、冒頭に戻りますが、産業医や衛生管理者は選任報告義務(安衛則第7条第2項、第13条第2項)で、厚労省は産業医の選任状況等を把握しているはずです。
実際「行政手続の棚卸し結果」によれば、厚労省は「産業医を選任した事業場数等」や「衛生管理者を選任した事業場数等」をデータベースで管理していることが窺えます。
しかしながらデータは非公開となっています。
ところが、たとえば大阪労働局統計年報には衛生管理者や産業医の選任状況が記載されているのです。ちゃんと要選任事業場数も載せていて、2019年の産業医の選任率は94.2%になっています。率だけでいうと官公署がいちばん低い。
いや、なんで国のデータは公開されてないわけ?
【以下追記】
安衛則では選任報告義務はあるけれど解任報告義務がないため、選任率を計算できない(現時点で選任されている数はわからない)との指摘を受けました。
たしかに、言われてみればその通りですね。
問題は、上で述べたように大阪労働局統計年報では選任率を計算して載せていることですね。
例によって(と書くのはどうなんだろうと思いますが)、年報には資料出所等は付記されていません。ただ、把握しているとすれば安衛則の様式第3号だろうと思うわけです。
また、官公署は労基署長に届出しないとの指摘もありました。ただ大阪労働局の年報は手許で今確認できるだけでも15年以上にわたって、官公署も含めて選任状況を記載しています。
もしかしたら安衛則の選任報告とは別系統のデータを用いているのかもしれませんし、あるいは単純にいいかげんな集計表を作っているのかもしれません。
それと、上記のような選任率を算出するかはひとまずおいておいて、単純に報告・届出の全体数を公表するのに、なにか問題があるのでしょうかね。各種届出件数は公表されているわけですから。