ぽんの日記

京都に住む大学院生です。研究とは関係ないことも気ままに書いていきます

沢村凛『ディーセント・ワーク・ガーディアン』

労働基準監督官を題材としたフィクションと言えば、ダンダリンが真っ先に思い浮かぶかもしれませんが、こちらも労働基準監督官を主人公とする小説です。

 

 

主人公・三村が労働基準監督官。その友人・清田は警部補。

本の紹介を読むと「お仕事小説」と書かれていたりしますが、時に殺人、時にアリバイ工作なんかも出てきて、ミステリと言ったほうが良いかと思います。

 

そうしたいくつかのエピソードを挟んだ後、三村がある人物の陰謀の対象にされてしまいます。労働基準監督官分限審議会にかけられて、罷免されそうになってしまうのです。

分限審議会というのは労働基準法97条の5項に規定されているもの。これは政治家などからの圧力や干渉から監督官を守るための規定です。国家公務員の身分を保障し、不当に辞めさせられることがないようにするための制度が設けられているのです。

しかし本来監督官の身分保障を担うはずの分限審議会が、逆に悪用されようとしてしまいます。

 

三村は周囲への迷惑を考えて、自ら辞めようとします。しかし働く者を守るべき監督官が、不当な理由で職を追われてしまってよいのか。最終的に三村は不当な圧力に闘い続ける決心をします。

 

このクライマックスの部分は、読んでいて目頭が熱くなりました。・・・・・・電車の中で読んでいたので、こんなとこで泣きたくないなと、こらえましたが。

 

この作品は監督官の仕事がどんなものか伝えるとともに、読み物としても面白い内容になっています。

監督官が書かれた仕事紹介や、あるいは監督官の小説はほかにもありますが、フィクションとしてはこの作品が屈指の面白さではないでしょうか。

もちろん、実際の業務について詳しいのは現役の、あるいは元監督官の方々でしょうが、物語の見せ方はこちらのほうが上手い。リアリティを保ちつつ、事実を超えた想像力があるためでしょうか。