ぽんの日記

京都に住む大学院生です。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

サービス残業は送検されやすいか

  • 監督官による送検
  • 送検状況
  • 送検率を見るうえで
  • 送検率の推移

監督官による送検

労働基準監督官は特別司法警察職員としての職務を行うこともできます。警察と同じように、令状を取って強制捜査や逮捕を行うことができるのです。この刑事訴訟法上の職務は、労働基準法等の違反についてのみ認められているので、一般司法警察員(=警察官)に対して特別司法警察員と呼ばれます。

 

監督官が労基法違反の企業を送検できるのは、この司法警察員の権限があるからです。もっとも、この職務を監督官が独占的につかさどっているわけではありません。監督官よりも警察による送致件数が多かった時代があったことは、別の記事で書いたことがあります。

 

監督官が行う司法処分は、労働基準監督行政における最終手段とも言えます。繰り返し是正勧告を行っても改善が見られない会社に対しての措置であり、刑事罰を科すための手続きだからです。

 

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出所)平成29年3月16日「第1回労働基準監督業務の民間活用タスクフォース」資料2厚生労働省提出資料

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鎌田浩毅『地学ノススメ』

ブルーバックスから出ている、地学の入門書。

大学の入試科目に選択されないという憂き目を見ている地学だけれど、「ほんとはこんなに面白いのに」という著者の声が伝わってくるよう。

初学者でも割合読みやすいし、「おもしろくてタメになる」という謳い文句はその通りだと思う。

 

ブルーバックスの新書だが縦書きになっている。それがある種、物語として読みやすくなっている点でもある。

内容はおおむね地学研究の進歩に沿って書かれてる。このような科学史的な書き方は、どのような謎が関心を持たれてきたか、どのように解明されてきたかが掴みやすくて、理解を助ける。

初めは地球が丸いことをどのようにして知ったかといったことから始まり、ウェゲナーの説がプレート・テクトニクスにつながっていくだとか、プルーム・テクトニクスの考え方に至ったりだとか。

 

 

・・・高校の地学には、21世紀になってからの研究の最先端が教えられるという特徴があります。・・・

数学では17世紀までに発達した微積分などの内容が教えられ、化学では19世紀までに発見された内容までが教科書に載ります。また物理では20世紀初頭に展開された原子核物理学までが教えられ、生物では少し時代が下りますが20世紀後半に進歩した免疫や遺伝子操作までが入っています。

これに対して地学では、まさに今世紀になって新しい研究が展開中のプルーム・テクトニクスや、地球温暖化問題が教科書で扱われているのです。(6頁)

高校で勉強してた時はこんなこと全然考えなかったけど、言われてみるとなるほど。

高校での学習と大学での研究の距離感って、きっと分野ごとに違うよね。大学レベルの数学とか、足を踏み入れたくない。……いえ、本書ではそんな話をしているわけではありません。個人の感想です。

 

地球の歴史を扱う学問なだけに、タイムスケールが大きい。実験科学と違って、地震や火山の噴火などの出来事は一回性的な現象でもあって、そういうところは歴史学・考古学に近いのかもしれない。

 

地磁気の逆転」という現象は、京都帝大の松山基範(もとのり)教授(1884~1958)が最初に明らかにしたそうだ。でも1929年に発表した地球磁場の反転説は当時は受け入れてもらえず、1960年代の古地磁気学の発展を待たなければならなかった。

この手の「生前は評価されなかった」的な研究は、短期的に業績を求める潮流の中では生まれにくくなるのだろうな。

 

働き方改革実行計画

2017年3月28日に働き方改革実現会議で決定された「働き方改革実行計画」。

その中には高プロは入っていない。

 

掲げられているのは

非正規雇用の処遇改善
 ・同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備
 ・非正規雇用労働者の正社員化などキャリアアップの推進
②賃金引上げと労働生産性向上
 ・企業への賃上げの働きかけや取引条件改善・生産性向上支援など賃上げしやすい環
境の整備
長時間労働の是正
 ・法改正による時間外労働の上限規制の導入
 ・勤務間インターバル制度導入に向けた環境整備
 ・健康で働きやすい職場環境の整備
④柔軟な働き方がしやすい環境整備
 ・雇用型テレワークのガイドライン刷新と導入支援
 ・非雇用型テレワークのガイドライン刷新と働き手への支援
 ・副業・兼業の推進に向けたガイドライン策定やモデル就業規則改定などの環境整備
⑤病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障害者就労の推進
 ・治療と仕事の両立に向けたトライアングル型支援などの推進
 ・子育て・介護と仕事の両立支援策の充実・活用促進
 ・障害者等の希望や能力を活かした就労支援の推進
⑥外国人材の受入れ
 ・外国人材受入れの環境整備
⑦女性・若者が活躍しやすい環境整備
 ・女性のリカレント教育など個人の学び直しへの支援や職業訓練などの充実
 ・パートタイム女性が就業調整を意識しない環境整備や正社員女性の復職など多様な
女性活躍の推進
 ・就職氷河期世代や若者の活躍に向けた支援・環境整備の推進
⑧雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育
の充実
 ・女性のリカレント教育など個人の学び直しへの支援や職業訓練などの充実
 ・転職・再就職者の採用機会拡大に向けた指針策定・受入れ企業支援と職業能力・職
業情報の見える化
 ・給付型奨学金の創設など誰にでもチャンスのある教育環境の整備
高齢者の就業促進
 ・継続雇用延長・定年延長の支援と高齢者のマッチング支援

 

図表3-2-1 働き方改革実行計画の全体像

図は平成29年版厚生労働白書から。

 

2015年4月3日に提出された「労働基準法等の一部を改正する法律案」には、裁量労働制の拡大や高プロの創設がすでに入っているわけだけれど、その後の「働き方改革実行計画」の中には入ってなくて、でも2018年4月6日提出の「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」にはちゃっかり入っているのか。

 

 

1075万円

高プロの年収要件として「1075万円」という数字が流布してます。法律案にこの数字が書き込まれているわけではないので、実際に1075万円になるかは不明です。

  • どう計算?
  • 1,075万の出自
  • 捕捉
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労働時間等総合実態調査と監督官の調査権限

厚労省が実施した「労働時間等総合実態調査」の杜撰さが取り上げられてますね。

d.hatena.ne.jp

そもそもこれを「調査」と呼んで良いのだろうかというのが疑問。もちろん「労働時間等総合実態調査」として報告されているわけだけれども、もとは「調査的監督」として実施されているものですから。

調査として実施したものを、後で調査と呼称しているのが、違和感を覚えるというか、気味の悪さを感じる。

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厚労省に情報公開請求をしてみた話

情報開示請求という手続きがありますよね。行政機関が保有している文書などの公開を求めるやつ。

各省庁に対する情報開示請求はオンライン上で行うことも可能なんですね。私は地方自治体に対しては、窓口まで直接行って請求したことはあるのですけれど、電子政府の総合窓口e-Gov イーガブでやったことはありませんでした*1

 

www.e-gov.go.jp

私が関心を持っている労働行政に関しては、今般の国会で「労働時間等総合実態調査」のデータのいい加減さが話題となっているところでしたので、情報開示請求をしてみることにしました。

  •  2018年3月16日申請
  • 3月28日18:30頃 労働基準局労働条件政策課より電話
  • 3月30日19時 メール受領
  • 3月31日15時 手数料等納付の通知メール
  • 4月13日13:40 開示決定メール
  • 4月16日15:10 手数料等納付の通知メール
  • 5月21日14:30ごろ 電話
  • 5月23日 文書到着

*1:正確に言うと、途中で申請を取り下げることが多かったので、最後まで手続きを終えたことがありませんでした

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中学生がバーテンダーで働く/アニメ『ヒナまつり』

4月から放送しているアニメ『ヒナまつり』の作中で、中学生がバーテンダーとして働く描写が出てきます。

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時給は1,500円だそうです*1。いえ、そうではなくて中学生を夜の店で働かせるのは犯罪です。未成年者の飲酒・タバコは犯罪です、みたいなことをいちいち述べるのは無粋かもしれませんが、一応ね。

*1:アニメ第3話参照

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