監督機関による定期監督の内訳の推移について、そういえばまだ書いてなかったことに気づいたので、載せておきます。
いずれも『労働基準監督年報』からの作成です。
労働基準監督署の監督は企業単位でなく事業場単位で行われます。
業種別にみると、2015年だと約3分の1が商業です。製造業、接客娯楽業、建設業と続きます。
これに対して、実際に定期監督を実施した件数は下のグラフです。
なお、定期監督件数の業種別の内訳が把握できるのは1957年以降なので、その部分についてグラフ化しています*2。
やや比率が低下してきたとはいえ、製造業、建設業が多いですね。両者で6割ほどを占めています。対して商業は10%台です。
事業場の数では商業が多いにもかかわらず、監督先は製造業や建設業が多いということです。*3
これはもちろん、故なきことではありません。近年は長時間労働への取り組みがクローズアップされていますが、監督署が長らく最重要視していたのは災害防止でした。そのため機械や危険有害物質を扱う事業に対する監督が多くなっているのです。
このグラフは労働災害の死亡者数を業種別に見たものです。いわゆる工業的業種のほうが命の危険が大きいことが分かります。*4
なお、定期監督の実施率はこんな感じです。
全業種載せると見づらいため、工業的業種だけにしています。ただし「計」とあるのは、非工業的業種も含んだ全業種の平均です。
監督実施率というのは、事業場数に対する監督件数の割合です。もしすべての事業場に年1回監督を実施している場合、実施率は100%になります。年2回監督できていれば200%、逆に10年に1度しか監督できていなければ10%となります。
直近の定期監督実施率は約3%です。なので全ての事業場を回るのに約30年かかる計算です。(あくまで計算上の話ですが)
この監督実施率は業種別にみると、工業的業種は平均以上に高い数字となっています。やはり相対的に重視されていると見て良いでしょう。
運輸交通業で60年代末に高くなっているのは、交通安全運動期間に一斉監督が取り組まれた影響だと考えられます。