この間に読んだ生活保護を扱った本。
1つ目は役所てつや原案、先崎惣一著の小説『フクシノヒト』。大卒で役所に就職した主人公が福祉化保護係に配属され、ケースワーカーとなる話。
貧困の世界というよりも未知の世界に向き合っているというような印象。高校、大学と同質的な集団のなかで教育を受け人間関係を築いていると、知識やニュースとしては知っていても、リアルな存在としての貧困層が近くにいなかったりする。そうした、これまで見えていなかった人たちのことに気づいて、主人公の物の見方が変わっていく。
職員のなかで保護係の仕事は「汚れ仕事」と認識され、一時的に仕方なくやらされるみたいに思われているわけだけれど、働くうち主人公は仕事に誇りを持つようになっていく。
ケースワーカーが主人公の話は、柏木ハルコ『健康で文化的な最低限度の生活』という漫画があって、こちらの漫画のほうが貧困の現場を知りたいという人には良いと思う。『フクシノヒト』はケースワーカーを通じて貧困を描いているというより、ケースワーカーや保護係の職場のほうに焦点がある気がする。貧困というテーマというより、汚れ仕事に向き合っているような。
ケースワーカーではなく、受給者の側から生活保護を描いたのが小林エリコ『この地獄を生きるのだ』。フィクションではなく実際の体験記。
生活保護に、あるいは貧困の状態になるとこういう心理に陥るのか、という点についてはやはり当事者としての肉薄性がある。生活保護から脱却したいのに、ケースワーカーがそれを手助けしてくれないとか、貧困ビジネスに利用されるとか、あるいはそもそも自殺未遂に至る労働環境だとか、そういう問題を生活保護の利用者がどう感じているかというのが面白い。
この地獄を生きるのだ うつ病、生活保護。死ねなかった私が「再生」するまで [ 小林エリコ ]
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