なかなか面白く読めた。ほとんど全編にわたって楽しく読める。
本書は文庫本の巻末についている「解説」について論じたもの。いわば解説の批評。扱っているジャンルは名作と呼ばれるものから、青春小説やミステリ、翻訳に至るまでさまざま。
同じ作品であっても、異なる文庫に収録されれば違う人物が解説することもある。あるいは新版が出版されれば、解説者が変わったり。そうすると同じ作品であっても複数の解説が存在したりするわけだけど、それを読み比べていくとこうも面白いとは。論者によって、時代によって、解説の内容が変わる。ものによっては全く正反対の観点で書かれていたりして、読者を新鮮な世界に誘う。
解説というのは、一応目を通すけれども、そこまで気に留めないという人も多いかもしれない。しかし本書を読むと、解説がいかに本に輝きを与えているか、あるいはその逆か、ということを考えずにはいられない。解説は単なるおまけなどではなくて、もっとも近くにある批評なのだと。
本書で解説されている作品は読んだことのないものが多いけれど、それでも本書は読みやすいし、もとの作品を読んでみようという興味が湧く。優れた解説がある一方、そうでない解説に対しては鋭く切り込む。
奥付を見て思い出したけれど、本書の著者は『文章読本さん江』を書いた人。この本は以前に読んだことあったけれど、やはりざっくばらんに語り口が面白かったのを覚えている。
解説の妙を見せられたようで、満足できた1冊だった。