「労働基準関係法令違反に係る公表」がどのように運用されているか、という話です。
行政による制裁的公表制度は他施策にも見られるものですが、本制度において押さえておくべき点は、「公表」と「掲載」は異なること、掲載した事案を削除する規定が設けられていることです。
下記のとおり、都道府県労働局(以下「局」)による公表が行われると、まずは局のホームページに掲載され、その後厚生労働省(以下「本省」)がとりまとめて本省のホームページに掲載されるという手順になっています。
掲載期間は概ね1年ですが、必要性がないと判断された場合などには、それ以前の段階で削除されます。
以下、本エントリーで対象としているのは本省のホームページの掲載リストです。
2018年2月から2019年1月の各月末に掲載されたリストを収集し、公表月・掲載月ごとに整理して表にしたのが以下の表です。
公表は、送検または局長指導が行われたあと速やかに局で公表されることになっています。一方、とりまとめの関係上それが本省のリストに掲載されるのは公表のおよそ1か月後となります。上記表でいえば、たとえば2018年1月に公表された事案が本省ホームページに初めて掲載されるのは同年2月末(件数にして69件)ということです。
集計表で薄紅色に着色した部分を合計すると688件です。これが2018年中に公表され、本省のリストに掲載されることとなったユニーク件数となります。
「労働基準監督年報」によれば2018年の送検数は896なので、送検された事案のうち4分の1ほどは、そもそも公表されないか、公表後ごく短期間で掲載不要と判断されていることになります。
一度掲載された事案については、概ね1年で削除されることとなっていますが、およそ半数ほどはそれ以前の時点で削除されています。
公表月別に、最初の掲載からの経過月数に応じて継続掲載率がどう変化したのかをみると次にようになります。