ぽんの日記

京都に住む大学院生です。twitter:のゆたの(@noyutano) https://twitter.com/noyutano

一言感想メモ(2018年冬アニメ)

順不同。最終話を迎えていないものは書いていない。

 

ヴァイオレット・エヴァーガーデン

テレビアニメ史上最高の作画

 

からかい上手の高木さん

純度100%のニヤキュン

 

宇宙よりも遠い場所

南極が舞台の暖かいお話

 

3月のライオン

将棋というより人間ドラマ

 

りゅうおうのおしごと!

元ネタあるんだ…将棋

 

刻刻

永遠は一瞬で、一瞬は永遠

 

三ツ星カラーズ

斎藤がイイよね

 

博多豚骨ラーメンズ

タイトルだけで見ないと判断しなくて良かった

 

citrus

これが女子高かあ…(ギャル監修付き)

 

ゆるキャン△

くぁwせdrftgyふじこlp

 

恋は雨上がりのように

 

デスマーチからはじまる異世界狂想曲

狂想曲の意味を調べてしまった……

「変化に富んだ自由な手法で作曲した器楽曲」

 

ポプテピピック

以前某SNSで「同じ映像に別の声優」でって書いてしまったのだが、こんなで形でやってくるアニメがあるとは……。でもごめん、見てない……

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2016年版『労働基準監督年報』比較

労働基準監督年報の最新版(2016年)がアップされました。

年度末(3月末)に年度のものを公表することが続いているようなので、2年前の気がしますが、2016年版が最新年となります。

労働基準監督年報|厚生労働省

 

ただ、行政運営方針は年度ごとに策定されますが、付属の統計表は暦年集計だと思われますので、少々ややこしいですね。

 

 

折角なので、前年の監督年報とどう変わったのか比較してみました。

 

第2節「労働条件対策の推進」の部分では「働きすぎ防止のための取り組み強化」が「長時間労働是正のための取り組み強化」となりました。内容としては新たに始まった施策が加わっています。

 

一方で「4 学生アルバイト~」は独立した項目ではなくなってしまいました。この部分はブラックバイト問題などを受けたものだと思われ、2014年の年報には記載がありませんでしたが、2015年版になって記載されました。しかし2016年版は「3 若者の~」の部分と一緒になり、記述の分量的にも短くなっています。

 

そのほか2015年版では「労働時間対策」が第5節に設けられていましたが、2016年版では削除されています。同様の内容を第2節の部分に整理したのだと思われます。

 

大きな変化はこの辺りでしょうか。

 

 

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野村不動産の「特別指導」の件 覚書

「特別指導」と現行の公表制度

野村不動産の件は企業名公表制度とはそもそも別案件ではないかという話。

 

現行の公表の枠組みはこれ。

違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について

 

このなかで公表するとされている内容は以下の4点です。

ア 企業名
長時間労働を伴う労働時間関係違反の実態
ウ 局長から指導書を交付したこと
エ 当該企業の早期是正に向けた取組方針

 

野村不動産の件で問題となるのはイの部分。ここに「裁量労働制の違法」や「労災認定」は含まれないように思われます。

先の通達では「労働時間関係違反」を次のように定義しています。

労働基準法第32・40条(労働時間)、35条(休日労働)又は37条(割増賃金)の違反(以下「労働時間関係違反」という。)

 

裁量労働制や事業場外みなし労働時間制は38条(時間計算)の条文です。時間外労働協定(36協定)の36条についても上記の「労働時間関係違反」には入っていません。

 

もっともこれは単に違法条文のカウントの仕方の問題と思われます。36協定は32条の面罰規定ですので、36協定違反があった場合は36条違反ではなく32条違反で処罰されているはずです。裁量労働制の違法適用があったとしても32条や37条で処理されているのだと思います。

「労働基準監督年報」の「定期監督等実施状況・違反状況」でも36条や38条の違反件数は計上されていません*1

 

では、裁量労働制の違法適用があって32条や37条違反となった場合に、裁量労働の違法があったことは公表されるのでしょうか。

先の通達の中ではその点について書いていないのではっきりしません。「32・40条(労働時間)、35条(休日労働)又は37条」しか公表できないのであれば、裁量労働制については公表できないような気がします。

 

この企業名公表制度で最初に公表された事例は株式会社エイジスです。

その際の公表内容は以下の通り。

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違法な長時間労働を複数の事業場で行っていた企業に対し千葉労働局長が是正指導をしました

 

当時の公表基準である「1か月当たり100時間」超の労働者数が掲載されています。「違反の実態」とは公表基準に関しての実態だということでしょう。

そのため裁量労働制の違反があったかどうかは、基準とは直接には関係ないので*2、公表されないのではないかと思われます。

 

 

もう一点、労災認定に関してですが、公表基準では以下のようになっています。

過労死に係る労災支給決定事案の被災労働者について、①1か月当たり80時間を超える時間外・休日労働が認められ、かつ、②労働時間関係違反の是正勧告を受けていること。

ここでも基準になっているのは「長時間労働」です。裁量労働が違法適用されていたかどうかではありません。

ですから仮に労災が公表されるとしても、その内容は「被災労働者の労働時間」に留まるのではないでしょうか。もちろん、その背景としては裁量労働制の違法適用があるわけですが。

 

また公表内容は「イ 長時間労働を伴う労働時間関係違反の実態」となっているので、労災認定がなされたかどうかは公表内容ではありません。もっとも「過労死に係る労災支給決定事案の被災労働者」の労働時間の実態を公表するということは、事実上労災認定を公表するということになるでしょう。

 

しかし長時間労働が過労死ラインに満たなくても、過労死の労災認定がなされることはありうる事態です*3

ということは労災認定がなされたとしても「長時間労働を伴う労働時間関係違反」が無いこともありうるわけです。その場合には、現行の公表制度では労災認定は公表されないということになります。

 

 

つまり現行の企業名公表制度では、裁量労働制の違法も労災認定も、どちらも直接的には公表内容とはなっていないのではないかと思います。それにもかかわらず裁量労働の部分についてだけ公表してしまったのが「特別指導」だったのではないでしょうか。

 

 

是正勧告を認めない理由の報道

どう考えても「特別指導」を公表した段階で是正勧告の公表もしているはずなのに、加藤厚労大臣がそれを否定しています。

 

その理由についての報じられ方を見ると

 

 公表を認めないのは、認めてしまうと野村不動産への調査の端緒となった過労自殺についても説明を求められ、安倍政権が今国会の目玉とする働き方改革関連法案の国会審議が滞ることを懸念しているためではないか、と野党はみている。

朝日新聞2018年4月6日朝刊「(時時刻刻)答弁、矛盾次々」

  

野党は「特別指導の背景には過労自殺があったのでは」との質問を繰り返しており、重大な労災事案に対して行われる是正勧告をしたことを公表すれば、過労自殺があったのではとの疑念が深まる。また、安倍首相や加藤厚労相は特別指導の発表時に過労自殺を知らなかったという趣旨の答弁を国会でしているため、厚労省からの報告の有無も含めて追及が激しくなることが予想される。

毎日新聞2018年4月6日朝刊「東京労働局長:きょう招致」

 

是正勧告と労災を結びつけているようですが、是正勧告は法違反があった場合の行政指導です。労災認定とは関係ありません。完全に合法的な働かせ方をしていたとしても、労災が発生することは考えられます。

(是正勧告についてはこちらに書きました。是正勧告と指導の違い - ぽんの日記

 

 

是正勧告の公表を認めない方向に転じたのは、「特別指導」が公表基準に該当しないのに公表してしまったのを、今になって取り繕っているからではないでしょうか。

 だが、厚労省は先月28日、加藤氏が特別指導について事前報告を受けた際の資料をほぼ黒塗りにして国会に提出した。「公表した是正勧告の部分は開示すべきだ」と迫る野党に、厚労省が持ち出したのが「公表していない」との主張だった。

前掲朝日新聞

 

是正勧告は通常公表しないわけです。その例外として公表基準に該当するもののみ公表しているわけです。

「特別指導」を公表する際にプレスリリースなどの正式な発表資料を出さなかったのは、公表基準に合致しないことを自覚しているからではないでしょうか。そして基準に該当しないという事実は今でも変わっていないので、野党から求められても文書で是正勧告の事実を認めようとしていないのではないかと思います。厚労省が文書ではっきり開示してしまうと、是正勧告は原則公表しないというこれまでの姿勢との一貫性を問われますから。

 

 

 

「2OUT」案件なのか

野村不動産の件が「2OUT」案件に該当するのかという点について追記です。

 

 

 「過労死等ゼロ」緊急対策

 

 

「新宿労働基準監督署(同)が把握した男性の残業は、15年11月後半からの1カ月で180時間超。長時間労働が原因で精神障害を発症し、自殺に至ったとして労災が認められた。労働時間の管理は自主申告に委ねられていて、申告された時間は実際の労働時間より大幅に少なかったという。」*4と報道されていますので、1OUTは確実ですね。上記図で言えば「②+」の要件に該当します。

申告された時間が大幅に少なかったということは、仮に36協定の範囲内であっても割増賃金違反になるはずです。

 

ほかがちょっとよく分かりません。報道を見落としているだけかもしれませんが、単に裁量労働制の違法適用というだけでは要件に該当しませんから。

 

長時間労働が被災者のみであったならば、①に該当しない可能性もあります。ただ被災者は180時間超の時間外があったとのことですので、他の労働者にも一定残業があったことは推測されます。

野村不動産は本社と地方4事業場に是正勧告を受けているので「3OUT」案件の可能性もあるでしょう。

 

いずれにしろ、どれくらいの長時間労働があったのかはっきりしないと、「2OUT」「3OUT」の公表基準に該当していたかどうかが不明です。

 

もし該当していないなら、そもそも公表すること自体に無理筋だったということです。

もし該当しているなら、該当しているという事実を伏せたまま都合の良い部分だけ公表したということになります。

 

つまりどちらにしろ恣意的です。

 

 

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*1:36条但書違反は計上

*2:仮に裁量労働の違反があっても、80時間超の残業がなければ公表基準には合致しない

*3:精神障害の認定基準では「特別な出来事」として「極度の長時間労働」だけでなく「心理的負荷が極度のもの」も挙げています

*4:朝日新聞2018年3月4日

「是正勧告してあげても」が威圧発言になる不思議

今年3月30日に行われた勝田東京労働局長と記者のやりとり(一部抜粋)

 

是正勧告したというのが、黒塗りになっているのはおかしいということですね。

 鈴木部長「おかしいかどうかは分からない」

 「通常は、是正勧告しても言えないです」

 ――中身については、あのとき言ってなかったですけど。したということ自体については言ってたんですよ。

 「何なら、皆さんの会社に行って、是正勧告してもいいんだけど。各社も」

 ――それはどういう意味ですか。

 「多くのマスコミでも違反が無いわけではないのでね」

会見録に書かれた東京労働局長と記者との主なやりとり:朝日新聞デジタル

 

この発言の問題点についてはすでにいくつか指摘されています。

 

監督行政の中立公正さを歪めた東京労働局長発言の重大さ~直ちに職を辞して謝罪すべき~(嶋崎量) - 個人 - Yahoo!ニュース

この強力な権限をもつ組織の大幹部が、取り締まられる可能性のある対象者(報道機関)に対して、取り締まられたくなかったら黙っていろと、脅しをかけた発言としか捉えられないのが、今回の発言だ。

 

「是正勧告してあげても」との東京労働局長の発言は、野村不動産に対する特別指導をめぐる真相追及への圧力(上西充子) - 個人 - Yahoo!ニュース

この3月30日の東京労働局の定例記者会見は、野村不動産における過労死が報じられて以降、初めて行われた定例記者会見であったという。そのため、この間の疑問点が記者団から次々と投げかけられ、それを封じるような形で問題の恫喝発言があったのだ。

 

許される発言でないのはその通りです。

ここではこの発言の意味を以下の2点について考えたいと思います。1つはそもそも是正勧告や企業名の公表について、厚労省は建前の上では制裁としていない点。もう1つはこの発言が記者(労働者)に対してなされた点。

 

建前上は制裁ではない

まず是正勧告ですが、これは行政指導であって、行政処分ではありません。非権力的行為、事実行為です。したがって強制力はなく、会社側の任意の協力を前提としています。

 

会社は是正勧告に従う義務はなく、行政処分ではないので取消訴訟もできません。是正勧告の取り消しを求めた訴訟は却下されています。

 

一般に是正勧告というのは労働基準監督行政を実施した際に発見された法違反に対する行政指導上の措置であるに止まり、勧告を受けた者が自主的に是正することを、右是正勧告をした労働基準監督官として当然期待するであろうが、たとえ、勧告に従った是正をしないにせよ、何らの法的効果を生ずるものではないことが認められる。

しかして、行政事件訴訟法3条の抗告訴訟の対象たる行政処分とは、当該処置がそれ自体において直接の法的効果を生ずる行為、すなわち直接に国民の権利自由に対する侵害の可能性のある行為に限られると解されるから、本件是正勧告は抗告訴訟の対象とならない

(橋本商事是正勧告取消請求事件 福井地判 昭和45・9・25)

 

先般の規制改革推進会議「労働基準監督業務の民間活用タスクフォース」においても、監督指導は制裁ではないと述べられています。

労働基準監督官の行う監督指導は、違法な事業主に制裁を加えることではなく、労働基準法に違反する労働実態を是正させ、将来にわたって労働者が安心して働けるような適正な労働環境を確保することが目的である。

第2回「労働基準監督業務の民間活用タスクフォース」厚生労働省説明資料 31頁

 

 

制裁ではないというのは企業名公表に関しても同様の見解です。

なお、当該公表は、その事実を広く社会に情報提供することにより、他の企業における遵法意識を啓発し、法令違反の防止の徹底や自主的な改善を促進させ、もって、同種事案の防止を図るという公益性を確保することを目的とし、対象とする企業に対する制裁として行うものではないこと。

(基発0120第1号平成29年1月20日 )

 

 それは今回の特別指導においてもそう発言されています。

厚労省の土屋喜久審議官は、野村不動産に特別指導をして公表した理由を「同じことが他社で起きてはならない。異例だが特別な指導という考え方をとり、日頃であれば申し上げていない指導を公表した」と説明した。

朝日新聞2018年3月7日朝刊「野村不動産への特別指導は2例目 昨年末 前例、電通のみ 公表は初、異例の対応」)

 

つまり公表するのは同種事案の防止を図るのが目的であって、決して企業に対する制裁なのではありません。

 

 

発言が威圧になる理由

もうひとつ気になるのは、これが記者(労働者)に対してなされた点です。労働者に対して「是正勧告してもいいんだけど」と発言することが威圧になるというのは、事実としてはそうかもしれませんが、ちょっと面白いと思います。

 

労働基準法はもともと労働者保護法の位置づけです。「労働者保護」という表現が適切なのかという意見もあるので、ちょっと古い言い方かもしれませんが。

それでも労働基準法が立場の弱い労働者のためにあるのは事実でしょう。労使対等が原則ではありますが、労働者に不利な条件になりすぎないように最低基準を定めているのです。

 

ですから法違反が是正されることは、本来労働者の利益となるはずです。

報道各社のトップや幹部に対して「是正勧告するぞ」と言うのが脅しになるのなら分かりますが、現場の記者に対してこう発言することが脅しになるというのは不思議です。

 

記者の側から「ぜひやってください」って言われたら応じてくれるのでしょうか。

そうならないことが分かって発言しているのでしょうから、ホンネが透けて見えます。

 

 

したがって「是正勧告してあげても」の発言は、建前上制裁ではない言ってきたはずの是正勧告や企業名公表を威圧手段に用いており、しかもこう発言すれば労働者であるはずの記者が黙るだろうと考えている点で、すごく倒錯した発言に思えます。

東京労働局のトップの発言として適切とは思えません。

 

 

 

野村不動産への「特別指導」(続き)

なるほど、なんとなく分かってきた。

 

昨日書いたエントリー(是正勧告と指導の違い)では、なぜ違法があったと発表したのに是正勧告したことを認めたくないのかを、「指導」と「是正勧告」の違いから考えようとしましたが、そういうことじゃないようです。

「特別指導」の公表自体が根拠のない異例のことで、しかも労災認定があったことまで発覚してしまったから、ますます恣意的だったことになる。それで「特別指導」の公表そのものを曖昧に誤魔化そうとしている、といったところでしょうか。

 

 

 

昨年の報道について

昨年の報道では各紙が野村不動産への特別指導を報じました。以下の記事ではすべて「特別指導」の語が出てきます。

 

毎日新聞

2017.12.26 夕刊「野村不動産裁量労働制を不正適用 東京労働局、特別指導」

2017.12.27 朝刊「残業代未払い:野村不動産に是正勧告 「裁量労働」不当適用」

朝日新聞

2017.12.26夕刊「野村不動産に是正勧告 残業代未払いも 裁量労働制で不正」

2017.12.27朝刊「裁量労働、営業に違法適用 野村不動産に是正勧告」

読売新聞

2017.12.27朝刊「裁量労働を不当適用 残業代未払い 野村不動産に是正勧告」

 

ただ、「特別指導」というのがどういうものなのかについては報道ではよく分かりませんでした。東京労働局のHPにも記載されていません。

 

全社的指導

報道では

不動産大手の野村不動産の本社(東京)や関西支社など全国4拠点に対し、各地の労働基準監督署が是正勧告をしたと発表した。宮嶋誠一社長に対し、是正を図るよう25日付で同労働局長から特別指導もした。

朝日新聞2017.12.27朝刊)

とあります。

 

経営トップに対する指導であるので、行政指導段階での企業名公表制度なのかとも思いました。(ブラック企業の企業名公表制度について - ぽんの日記

この公表制度のもとでは、局長による経営トップによる指導が行われることになっています。(平成29年1月20日付け基発0120第1号

 

ただ、「80時間超の違法な長時間労働」などについては報じられていないので、この仕組みによる要件を欠くようにも思います。東京労働局のHPにも特に発表はありませんでしたので、その点はもやっとしていました。

 

ちなみに労基署の監督指導は企業単位ではなく、事業場単位で実施されます。事業場というのは工場や事務所などの独立した単位ということです。

しかし大企業の場合には複数の事業場で同様の労働条件で働いていることも珍しくありません。事業場単位の監督ではなく企業全体に監督したほうが効率的なことも多いので、企業単位監督というのが新たな監督手法として導入されました。

 

企業単位で監督を行い、全社的に是正を図る監督は2010年度に東京・大阪で試行的に実施され、2011年度からは全国的に導入されています。*1

 

ところで「過労死等ゼロ」緊急対策では、「企業本社に対する指導」は2017年度から新たに始まったことになっています。……じゃあ2011年度に導入された仕組みは何?

 

しかしいずれにしろ、全社的に是正指導を行う仕組みは従来から存在しているので、これが「特別指導」に当たるとは思えません。

 

労災認定の報道

その後朝日新聞の2018年3月4日の報道で、男性社員の過労自殺が労災認定されていたことが明らかになりました。

この報道では「特別指導は過労自殺の労災申請が端緒だった」と書かれています。*2

 

当然、なぜ昨年の「特別指導」公表の際に労災認定を公表しなかったのかという疑問が浮上することになりました。

これを受けて書いたのが先ほどのブログの記事です。

ブラック企業の企業名公表制度について - ぽんの日記

 

企業名公表制度では、労災支給決定が要件の一部になっている一方で、公表内容は

ア 企業名
長時間労働を伴う労働時間関係違反の実態
ウ 局長から指導書を交付したこと
エ 当該企業の早期是正に向けた取組方針

 となっています。(平成29年1月20日付け基発0120第1号

 

そのため企業名が公表されても労災認定の有無等については公表されないのだと思われます。

しかしそもそも「特別指導」そのものが「働き方改革」を進めたいがための恣意的運用ではないかとの疑惑がもたれています。この点は以前のエントリーを書いた際に気を付けるべきでした。

 

なお、この「労災が端緒である」ということに関しても、それ自体は「特別指導」の理由とは思われません。企業名公表制度でもそうですし、「過重労働解消キャンペーン」における重点監督では「過労死等に係る労災請求が行われた事業場」を対象とすることが明言されています。労災認定ではなく労災請求です。

また定期監督で対象事業場を選定する際に、労災申請状況も勘案されます。

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第2回労働基準監督業務の民間活用タスクフォース 資料2

 

すなわち「労災が端緒」であることも当然ですが、さして特別なことではありません。

 

 

 

「特別指導」の何が特別なのか分からないということは、以前書かせていただきました。(野村不動産への「特別指導」とは何ぞや - ぽんの日記

まとめると、局長による指導であることも、経営トップに対する全社的な指導であることも、労災を端緒とすることも、どれも「特別」というほど真新しいことではありません。

やはり「公表基準を満たさないのに公表したこと」くらいしか「特別」の理由が見当たりません。

 

 

 

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*1:平成22年2月17日付け基発0217第4号および平成23年3月11日付け基発0311第3号

*2:朝日新聞2018年3月4日朝刊「裁量労働、社員が過労自殺 違法適用の野村不動産 労災申請契機、異例の指導」

是正勧告と指導の違い

臨検監督

労働基準監督官のメインの仕事は臨検監督に行くことです。

臨検監督は職場に立ち入り調査を行い、違反がないかチェックすることです。臨検とも呼ばれますし、その後の行政指導まで含めて監督指導と呼んだりします。

 

実際には細かい使い分けがあるのかもしれませんが、外から研究しているだけの私にはその辺のことは分かりません。ただ臨検監督の場合は「臨検」と書くのですから、監督官が現場に出向かないときには使わないのでしょう。たとえば申告事案の場合には、事業主を電話で呼び出して指導するというケースもあり、その場合は呼び出し監督などと呼ばれるようです。

 

是正勧告書と指導票

さて監督の結果如何によっては会社に対して文書による行政指導が行われます。法違反がある場合は是正勧告書、法違反ではないけれど改善したほうが良い点がある場合は指導票が交付されます。

 

これが「是正勧告」と「指導」になるわけですが、行政法的にはどちらも「行政指導」になります。すなわち行政処分のような強制力がなく、あくまで使用者側の任意の協力を前提としています。したがって仮に指導に従わなかったとしても罰則や不利益を受けることはありません。*1

 

たとえば残業代不払いの会社があったとしましょう。その場合でも監督官が最初に行なうのは「勧告」に過ぎません。監督官に賃金支払を命じる権限はなく、それができるのは裁判所です。*2

 

ちなみに監督行政の初期のころは口頭注意、是正勧告書、請書、念書という風に区分されていました。それが1964年の通達で是正勧告書(甲/乙)と指導という風に整理されました。*3

 

是正勧告の甲と乙の違いをみる前に、先に指導票がどういうものか確認しておきます。

 

指導票

指導業務については全労働[1994]が簡潔に説明しているのでそれを引用します。*4

 

監督時の指導とは①法違反を是正するためにどういう措置を講じたらよいかを明らかにするもの(例、プレス機械に使用停止措置を講じただけでは事業者はどうしたらよいか分からないので、ゲートガード式の安全囲いの取付、シートフィーダーの採用等を指導する)、②法律に規定されているものの義務規定ではなく努力義務規定であるもの、③法令に規定されていない事項であっても良好な労使関係、より良い労働条件あるいは快適な安全衛生環境実現のために指導するもの(例えば、労働福祉向上のための指導(セクハラ、THP等))がある。臨検監督時に相手の事業場でこれらの指導票を交付するには深い知識に裏打ちされた自信と確信がなければできるものではない(是正のためには相当の費用がかかることもある)。

(全労働[1994]『労働基準行政職員の職務』20頁)

 

法令の規定が努力義務に留まっている場合やそもそも規定がない場合には、是正勧告ではなく指導票になるということでしょう。

労基署が企業の生産計画にまで指導した事例があることは、以前ブログで書きました。(労基署による、生産計画への指導

 

ちなみに例として挙げられているセクハラは、1997年に事業主の配慮義務として均等法に規定されました。当時はもちろんですが、労基法ではないので労基署でなく労働局の管轄です。

 

是勧甲と是勧乙

是正勧告書には甲と乙という2つの区分がありました。是正勧告を略して、「是勧甲」「是勧乙」とも表記されました。

 

簡単に言うと、甲のほうが重い違反ということです。

すなわち、法定の基準とは別に行政の側で司法処理基準というものを設け、その基準に該当するものに対しては是勧甲を、該当しないものには是勧乙を交付していました。

是勧甲については是正がなされなかった場合は司法処分に付されますが、是勧乙については何回違反しても司法処分にはならなかったと言います。*5

 

全労働[1976]の「用語解説」では次のように説明しています。*6

勧告書甲・乙

是正勧告書甲と是正勧告書乙のこと。是正勧告書は、監督官が法違反について、行政権限(司法権とは別)にもとづいて、法違反を是正するよう事業主に勧告する書面。甲と乙の二種あり、甲は一定の重大な違反について、「指定期限までに是正しなかった場合は送検することがある」旨明記されている。乙は比較的軽微な違反に対して出される。乙については是正の確認は重視しない。

(全労働[1976]『これが労働行政だ』労働教育センター、4頁)

 

是勧甲の場合は指定の期日までに是正を求め、従わなければ司法処分されるということです。

 

この「是勧甲」という表現は近年の文献だと見かけないので、もう使われていないのではないかと思います。

実際、角森[2010]によれば「司法処理基準」という言葉は2006年以降通達の中から消えています。*7

「司法処理基準」の存否自体を厚労省は回答しませんが、おそらく処理基準そのものがなくなって、是勧甲・乙の区別もなくなったのだと考えられます。(あるいはもっと早くから区分は消滅しているのかもしれませんが、詳細は未確認です)

 

かつての批判

 是正勧告を甲と乙に区分することに対しては批判がありました。 それは乙事案が事実上是正の対象から切り捨てられているとも言えるからです。

 

監督制度研究会[1976]は次のように書いています。*8

 

臨検体制が「重点事項方式」に移行してからの監督の大部分が重点事項のみの監督、すなわち甲基準、使用停止等処分基準該当事項のみの違反指摘に終始することとなった。このためち密な徹底した監督が、ごく一部を除いては実施されず、是勧(乙)事案に至っては、是正報告さえも徴さず、出しっ放しに終わるケースが多くなっている。

(監督制度研究会1976『監督制度』38頁)

 

ここでは「甲基準」と書かれていますが、意味は前述したのと同じと考えて良いと思います。法令の条文とは別に司法処理基準を作ってそれに従って監督行政が運用されているのでしょう。

法定基準とは別に行政の側で基準を作ってしまうという問題点は、「是正基準方式」のところでも書いたと思います。(労基署は「中小企業の実態を考慮して指導・監督を実施する」ことになるのか――是正基準方式中小企業を監督対象から外す?

 

基準を作ること自体が悪いことだとは言うつもりはありません。監督件数や送検件数が限られている現状では、なにも基準がないと恣意的に運用されてしまう余地も生じてしまいますから。

しかし基準外の法違反について、それが事実上放置されてしまうという問題点は直視すべきです。

 

とりわけこの司法処理基準は一般に公開されていません。法律の条文に刑罰の重さが規定されているのは分かりますが、非公開の基準で事実上行政が罪の軽重を決めるというのが好ましいことなのでしょうか。

 

是勧甲の頻度

是正勧告(甲)の交付件数は、全国レベルでは集計されていません。

たまたま徳島の資料に件数が記載されていたので、そちらで簡単に確認したいと思います。*9

 

下の図は徳島県の監督状況について、「違反事業場数」「是勧甲交付事業場数」「送致件数」を1966~1981年まで示したものです。この時期しか揃ったデータがなかったのでこれで勘弁してください。

「是勧甲率」とあるのは「是勧甲交付事業場数」を「違反事業場数」で除して算出した割合(%、右軸)です。

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1975~6年に突然是勧甲の件数が増えていますが、違反事業場に対する割合は総じて低いことが読み取れると思います。

違反事業場のうち、8割方は見逃されているという計算になりますからね。そして送検に至る件数はぐっと少なくなります。もちろん、事業主が任意で是正して問題がすぐ解決してるから件数が少ないというのであれば問題はないんですけれども。

 

1975年頃になぜ急増したのかは分かりません。資料に特に言及はされていなかったので。今後の研究課題ということで。

前掲の監督制度研究会[1976]には

是勧(甲)交付事業場の増加は、主として労働安全衛生法施行に伴う就業制限(免許)と健康診断に関する規定強化(処理基準項目の増加)と不況等による賃金不遅払の増加であって、直ちに監督内容の充実による効果のみによるものとは評価しがたいものである。(37頁)

 とあるので、基準が変わったからと考えるのが最も妥当なように感じます。

 

是正勧告を認めない?

この報道は、例の東京労働局長の発言に関してのものです。

www.asahi.com

それでここの部分が理解できません。

加藤勝信厚労相は・・・中略・・・勝田氏が昨年12月の会見で野村不動産に是正勧告したと公表したことに対しては、公表していないとの認識を示して改めて説明に食い違いを見せた。ps://twitter.com/mu0283/status/981005887283257344

https://twitter.com/mu0283/status/981005887283257344

 

やりとりを見ても……

 

 

違反があったということは是正勧告をしていないとおかしいですよね?

「基準を公開したくないから、甲事案なのか乙事案なのかを言わない」っていうのは当てはまりませんよね。多分甲・乙の区分はもう存在していないと思いますし、仮に甲乙が分けられていたとしても、是正勧告したことに変わりはないわけですから。

そうすると、なぜ是正勧告を明言しないのか理解に苦しみます。

 

それとも違反があったかどうかを明言したくないのでしょうか。「特別指導」を公表したにもかかわらず?

違反でもないのに公表したのなら、なるほどそれは「特別」な措置だったと言えますね。

 

 

//twitter.com/mu0283/status/981006235875987456

ps://twitter.com/mu0283/status/981005887283257344/twitter.com/mu0283/status/98100588728325

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*1:工場の機械等が危険な状態のまま使われている場合などには、安全のために直ちに機械の使用を命じる行政処分(使用停止等処分)を行う権限がある。こちらは強制力のある命令である。

*2:質問主意書に対する答弁でもこのことは確認されている。衆議院議員村田吉隆君提出労働基準監督機関の役割に関する質問に対する答弁書

*3:「監督業務運営要領の改善について」(昭和39・4・20)。これについては松林和夫[1977]「戦後労働基準監督行政の歴史と問題点」『日本労働法学会誌』50号、24-5頁参照

*4:全労働とは全労働省労働組合の略称で、労働行政の現場に従事する職員からなる労働組合

*5:前掲松林

*6:本書は全労働の組合員による告発書。当時の手記が集められている。

*7:森洋子[2010]『改訂 労働基準監督署への対応と職場改善』53頁

*8:監督制度研究会は労働省有志の職員よって発足した研究会

*9:資料出所は徳島労働基準局・徳島婦人少年室[1983]『35年の歩み』徳島出版株式会社。全国レベルでは是勧甲の交付件数は集計されていないし、他地域でも掲載しているものは、筆者が確認した分については見当たらなかった。昨今の政治を見ていると、資料を残すということ自体に大きな価値があるように感じる。徳島に感謝

野村不動産への「特別指導」とは何ぞや

2017年の12月25日に東京労働局が野村不動産に対して「特別指導」を行いました。その翌日に「特別指導」を行ったことが公表されたのですが、実は同じ日に野村不動産での過労自殺が労災認定されていました。そしてこの労災認定の件は朝日新聞の報道があるまで伏せられていました。

 

経緯等については上西充子教授の下記の記事を参照ください。

 

news.yahoo.co.jp

 

野村不動産裁量労働制が違法に適用されていたということですので、それを指導すること自体は当然の行動でしょう。

問題はこの「特別指導」なるものがどういうものなのか判然としない点です。

 

素直に考えれば労災申請があったことが指導の端緒だと思われます。しかし東京労働局は端緒については答えていません。特別指導を公表した際には、労災認定には触れられませんでした。

そして「特別指導」という言葉も、単に特別な指導という意味に過ぎず、法的な根拠や規定があるわけではないと言います。

 

これらの点だけでも疑問が多く湧きます。

なぜ労災認定は伏せられたのか。なぜ特別指導が行われたのか。なぜその指導は公表されたのか。どういった点が特別なのか。

 

たしかに労災認定が行われたこと自体は一般には公表されません。電通の高橋まつりさんの件も遺族が記者会見をしたことにより明らかになったものでした。そういう意味で言えば、野村不動産の件で労災が公表されなかったのも同様と考えられます。

しかしそれならばなぜ、「特別指導」については公表されたのか。そして通常の監督指導ではいけなかったのか。

 

そもそも厚労省は、企業名の公表については慎重な姿勢を見せています。すでに企業名公表の基準を定めています。ところが野村不動産の場合はこの基準に該当するわけではないのでしょう。

 

基準がもともとあるのに、その基準とは関係なく企業名を公表するのであれば、その恣意性が問題になります。もちろん迅速な対応も求められる行政にとっては、一定裁量も認められているでしょう。

それでもやはり基準に該当しないのに公表するのであれば、なぜ公表すべき事案だと判断したのかについて、丁寧に説明を尽くさなければならないはずです。そうでなければ恣意的だとの批判のそしりを免れないでしょう。

 

特別指導

そもそも「特別指導」とはなにかを整理しておきたいところです。

最も直接的に尋ねているのは山井議員の質問主意書でしょうか。*1

 

質問主意書では次のように質問されています。

六 本件特別指導について、根拠となる法令を示すとともに、他の指導との相違点、すなわち「特別」である理由、実施する目的、根拠法令を示して下さい。なお、示すことができない場合は、その根拠となる法令を明示して下さい。

 それに対する答弁書は以下になります。

六について

 本件特別指導は、厚生労働省設置法(平成十一年法律第九十七号)第四条第一項第四十一号に掲げる厚生労働省の所掌事務に関する行政指導として行われるものである。
 なお、「他の指導との相違点、すなわち「特別」である理由、実施する目的、根拠法令」の意味するところが必ずしも明らかではないが、本件特別指導は、都道府県労働局長により行われるという点で、労働基準監督署の労働基準監督官により行われる一般的な行政指導とは異なるものである。

 

前半の「厚生労働省設置法~」の部分は単に行政指導の法的根拠について答えているだけです。通常の監督指導も行政指導として行われますので、この部分は「特別指導」の法的根拠を答えているわけではありません。

 

そして「特別」である理由としては都道府県労働局長が行った点を挙げています。

逆に言うと「それだけ?」という拍子抜けの回答です。ほかにもっと特別な点があるんじゃないのかと重ねて聞きたくなります。

 

また

七 本件特別指導に関連し、過去に「特別指導」という名称で実施した指導の件数を示すとともに、対象企業名、実施年月日、公表の方法をそれぞれ示して下さい。なお、示すことができない場合は、その根拠となる法令を明示して下さい。

ということも尋ねられていますが、それに対しても

七について

 本件特別指導を除き、お尋ねの「「特別指導」という名称で実施した指導」はない。

と答えています。

 

 

労働局長が行えば「特別」なのか

前述したように、行政指導段階での企業名公表はあります。*2

下図は「「過労死等ゼロ」緊急対策」の資料か転載したものです。

f:id:knarikazu:20180401152954p:plain

 

 この図からも分かる通り、すでに労働局長によって指導する仕組みは存在します。

この公表制度で初公表されたのは株式会社エイジスですが、この際も千葉労働局長が企業の代表に対して是正指導しています*3

 

この時の公表は「特別指導」とは呼ばれていません。

そもそも労基署が行おうが、労働局が行うが、労働基準監督官がその権限に基づいて行うことに変わりはないでしょう。

むしろ企業名の公表や全社的な指導*4のほうが「特別」だと思います。

 

その意味で、労働局長による指導が行われたことを「特別」としている答弁はあまり納得できません。

 

過去に「特別指導」はなかったのか

 もう一つ気になったのは「「特別指導」という名称で実施した指導」はないと答えた点です。

 

とりあえず「特別指導」という言葉が使われているのかだけ調べてみました。

そうすると過去に見られるのは「安全管理特別指導」や「衛生管理特別指導」という言葉です。

 

ただしこれは野村不動産への「特別指導」とは完全に別個のものでしょう。

実施に際しては実施要領を定めたうえで労働省からと都道府県労働基準局に通知をしています。特定の企業だけに対してなされたものではありません。

 

1971年には「労災特別指導事業場制度」というのが実施されています*5

これは労災保険給付の増加を受けて実施された制度のようで、労災保険の収支率について①過去3年の収支率②3年の最終年の収支率③同業種平均との比較の3つの観点から対象事業場を選定し、特別指導を行ったようです。

 

それから1991年の『労働基準監督年報』に「企業系列別週休2日制等特別指導」という言葉があるのを見つけました。

週休2日制の指導なので是正指導ではないでしょう。週休2日は法律では定められていませんから。

 

探せば他の特別指導の用例も出てくるでしょうが、今回の野村不動産の例のようなものは出てこない気がします。

野村不動産への特別指導は東京労働局のHPにも報道発表が掲載されておらず、報道等を参照するしかありません。だから仮に過去同様な特別指導があったとしても、公式な発表としては確認できないと言えます。

 

なんらかの政策目的や意図を持って監督指導がなされる例自体は頻繁に見受けられます。ただその場合も実施要領や監督計画が定められるのが一般的です。当然それは一企業のみを対象としたものではなく、同種の企業を広く対象とするものです。

 

今回の野村不動産の件も、なんらかの行政意図があったことは間違いないと見受けられますが、特定企業のみを対象にして公表するというのは解せません。

3月30日の会見で東京労働局長が「なんなら、皆さんのところ(に)行って是正勧告してあげてもいいんだけど」という威圧的な発言がありました。この発言自体も許されるものではないですが、野村不動産への「特別指導」そのものも、やはり恣意的と疑わざる得ません。

 

 

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